トマトのハウス栽培の始め方|新規就農に必要な設備・費用・準備を徹底解説!
ひとり農家のすすめ 実践編
イマジンファーム・アップルトマトのあるスギです。
私が新規就農したのは2006年8月です。今年で19年目です。最初は花卉栽培から始めました。
しかし、格安の輸入品の増加や長引く不況、燃料や肥料などのコストの増加から、花卉栽培に将来性は無いなと感じ、トマト栽培に品目転換しました。
トマトは農協に出荷しなくても、スーパーや道の駅で良く売れるし、自分で値段を決めれて規格も自由なので、花卉栽培に比べると、だいぶ農業経営していくことが楽になりました。
私は自由に、人の目を気にせずに気楽に仕事することが好きなので、起業してからずっとひとり農家でやってきました。
ひとりなので、収穫期とかめちゃくちゃ忙しいけど、なんとか効率よく作業をこなして今までやって来ましたし、これからもひとり農家にこだわって農業していこうと思っています。
今回のこのブログでは、トマト栽培農家を本気で目指している人や、家庭菜園の延長でハウスを建ててトマトを栽培したい人に向けて、トマト農家として農業経営していくための実践的な方法を出来るだけ具体的に書いて行こうと思います。
新規就農者がトマトのハウス栽培を始める際に必要な「準備」と「予算」について、分かりやすく解説し、土地の選定や設備導入の具体例、初期投資の見積もりから運営計画まで、初心者にも役立つ情報を網羅します。
はじめに
トマトは、日本の食卓に欠かせない野菜の一つであり、トマト栽培は新規就農者にも人気があります。特にハウス栽培は、天候に左右されにくく、安定した収穫が見込める点が大きな魅力です。また、トマトは品種が豊富で、味や特徴を活かした商品展開が可能なため、付加価値をつけやすい作物でもあります。
しかし、新規就農でトマトのハウス栽培に取り組む際には、適切な準備が不可欠です。設備や技術が必要な分、初期投資が大きくなる傾向があり、また高品質なトマトを安定して生産するためには、土壌や温度、湿度の管理を徹底する必要があります。加えて、販路を確保するための計画や、収益を安定させるための経営戦略も重要です。これらを適切に計画・実行することで、効率的かつ持続可能な農業経営が実現します。
農業は、私たちの生活に欠かせない食を支える重要な仕事であり、大きなやりがいを感じられる分野です。一方で、特に新規参入者にとっては、多くの壁があることも事実です。この記事を通じて、トマトのハウス栽培への第一歩を自信を持って踏み出せるよう、皆さんの背中を押せたら幸いです。
これからの農業に挑戦する皆さんの努力が、未来の食卓や地域の活性化に繋がることを願いながら、一緒に準備を進めていきましょう。
トマトのハウス栽培の特徴
自然を超えて“環境をデザインする”農業へ
ハウス栽培の最大の特徴は、「環境を自分でつくれる」という点にあります。
天候に頼らず、温度・湿度・光・水・風――すべてを制御することで、
自然の変動を超えた“安定した農業”を実現できるのが、ハウス栽培の本質です。
温度管理 ― トマトが「快適」に生きる空間をつくる
トマトは、気温の変化にとても敏感な作物です。
最適温度は昼22〜26℃、夜15〜18℃。
この範囲を外れると、光合成効率が低下し、花粉の活性も落ちてしまいます。
露地栽培では、真夏の猛暑や冬の寒波によって品質が大きく左右されますが、
ハウス栽培なら暖房機・換気装置・遮光カーテンを活用することで、
1年を通して安定した温度環境を保つことができます。
◎ 寒冷地でも、真冬にトマトが実る
外気温が氷点下になる地域でも、ハウス内では15℃以上を維持できるため、
冬でも糖度の高いトマトを生産することが可能です。
冬の果実は成長スピードがゆるやかになり、
じっくりと糖を蓄えるため、濃厚で旨味のあるトマトになります。
◎ 猛暑期でも、花粉と果実を守る
夏の直射日光はトマトにとってストレスです。
遮光カーテンやミスト冷却を使えば、ハウス内温度を3〜5℃下げることができ、
開花期の高温障害(花粉不稔や落花)を防ぎます。
つまり、ハウスは「トマトのための避難所」であり、
同時に「人間が理想環境を設計する実験場」でもあるのです。
収量の向上 ― 科学的管理が“1㎡あたりの収穫量”を変える
ハウス栽培の大きなメリットは、収量の安定と増加です。
環境をコントロールすることで、トマトがストレスを感じる時間を極限まで減らせるからです。
◎ 光・温度・湿度の最適化で、光合成効率を最大化
日射量センサーを利用して潅水量を制御し、
湿度は60〜80%の範囲に保ち、根圏の温度も一定に。
こうした環境制御により、トマトは常に“理想的な光合成リズム”を維持できます。
◎ 病害虫を抑えて、ロスを減らす
ハウス内は外部から隔離された空間のため、
病害虫の侵入リスクを低く抑えることができます。
また、湿度センサーや換気扇を使えば、
灰色かび病・葉かび病・うどんこ病といった“湿度由来の病気”を予防可能。
病害虫による減収が少ない=その分、収量が上がるというわけです。
◎ 高密度植栽が可能
露地栽培に比べ、ハウス栽培では1㎡あたりの株数を増やすことができます。
例えば大玉トマトなら2.5株/㎡、ミニトマトなら3株以上が一般的。
換気と温度管理を組み合わせれば、過密でもストレスを与えず育てられます。
◎ 養液管理による品質と収量の両立
養液土耕栽培では、EC(肥料濃度)やpHを日々調整することで、
「糖度を落とさずに収量を増やす」ことが可能です。
光合成・水分吸収・栄養吸収がバランスよく行われるため、
1㎡あたり10〜12kgの安定収量も実現可能です。
安定供給 ― “天候リスクゼロ”が信頼を生む
トマトの市場価格は、天候に大きく左右されます。
台風や長雨、猛暑によって露地栽培の出荷量が減ると、価格が高騰。
逆に天候が良すぎると、供給過多で価格が下落します。
しかし、ハウス栽培では天候の影響を最小限にできるため、
計画的な収穫と安定出荷が可能になります。
◎ 年間スケジュールを逆算して出荷
定植から初収穫まで約80〜90日。
このサイクルを計算しながら、出荷時期を冬の高単価期に合わせる――。
これがハウス経営の基本戦略です。
また、長期栽培では約10か月間連続で出荷できるため、
市場や取引先との信頼関係を築きやすく、
「安定供給できる農家」として評価されます。
◎ ブランド化・契約販売に有利
安定した品質と出荷リズムがあることで、
飲食店・スーパー・加工業者などとの継続的な取引が可能になります。
また、直販・ネット販売では「いつでも買える」安心感がファンづくりにつながります。
ハウス栽培は、「トマトを作る」から「供給をデザインする」時代へ。
生産と販売の両面で、強力な武器となるのです。
ハウス栽培のもうひとつの魅力 ― “トマトの個性を引き出せる”
ハウス内では環境をコントロールできる分、
トマトの味や香りを「設計」することも可能です。
- 水分をやや抑えると糖度が上がる
- 夜温を少し下げると酸味が引き締まる
- CO₂濃度を上げると果実が大きくなる
つまり、ハウスは“トマトの味をデザインできる空間”。
農業が「科学」と「芸術」の中間にあることを実感できるのが、ハウス栽培の面白さです。
ハウスは「自然を敵にしない」技術
ハウス栽培は、自然を排除するのではなく、
自然の力を“自分の味方に変える”技術です。
温度・光・水・空気をコントロールすることで、
トマトが一年中、快適に生きられる環境をつくる。
それが、現代農業における「安定・品質・信頼」の三本柱です。
そしてその結果、農家は天候に振り回されるのではなく、
自らの手で未来を設計できる生産者へと進化します。
ハウスとは、単なる建物ではなく――
「トマトと人間の共創空間」なのです。
トマトのハウス栽培に必要な設備
環境を“設計”することが収量と品質を決める
トマトのハウス栽培は、自然まかせの農業ではありません。「光・水・温度・空気・栄養」という5つの要素を人の手でコントロールする、いわば“環境工学”です。そのためには、目的に合わせた設備を整え、精密に運用することが不可欠です。
ビニールハウス ― トマトを守る「環境の器」
ハウスはトマト栽培の“舞台”です。
骨組みは鉄骨やアルミニウムで作られ、外側を透明フィルムで覆うことで、日射を最大限に活かしながら温度を保持します。
◎ 高さと換気が品質を決める
トマトは高温多湿に弱く、理想の環境は「昼22〜26℃・夜15〜18℃・湿度60〜80%」。
そのため、ハウスの高さはとても重要です。
天井が高いほど空気が循環しやすく、温度変化が緩やかになります。
最近では、天井高3〜4mクラスの高軒高ハウスが主流です。
◎ 換気装置の工夫
天窓・サイド換気は必須。自動開閉装置を取り入れることで、外気温や湿度に応じて自動調整が可能になります。
温度上昇による花粉障害や病害リスクを減らし、トマトの生育を安定させます。
◎ 耐久性とコスト
小規模ハウス(200㎡前後)は200〜400万円程度で建設できますが、
中〜大規模(1000㎡以上)では1000万〜1500万円が目安。
資材選びでは、「耐風・耐雪性」と「断熱性」を重視することが長期的なコスト削減につながります。
養液栽培設備 ― 科学的管理の“心臓部”
トマトの生育において、最も重要なのは根への栄養供給。
これを支えるのが「養液栽培設備」です。
土を使わずに液体肥料(養液)を根に直接届ける仕組みで、最近では土を利用した“養液土耕栽培”も増えています。
◎ 主な構成要素
- 養液タンク:肥料と水を混合し、EC値(濃度)を調整する容器。
- ポンプ&配管ライン:設定したタイミングで養液を供給。
- ECメーター/pHメーター:栄養バランスをモニタリング。
- ドレーン回収装置:排液を測定・再利用し、無駄を防ぐ。
◎ 養液のコントロールが収量を変える
トマトは、少しの濃度差で味や糖度が変化します。
日射量と気温、トマトの成長の各ステージに合わせて濃度を微調整します。
◎ 養液土耕栽培の強み
私が採用している「養液土耕栽培」では、
土壌に点滴灌水チューブを設置して、土の中で養液を緩やかに拡散させます。
この方式は、土の緩衝力+養液の精密制御を両立でき、味と収量の両方を引き上げる理想的なシステムです。
灌水システム ― 「水」を制する者がトマトを制す
トマト栽培で最も奥が深いのが水の管理です。
水の与え方ひとつで、糖度・酸味・果実硬度まで変わってしまいます。
◎ 点滴灌水システム
現在の主流は「点滴灌水」。
チューブの先端から一定量の水を滴下し、根域に均等に浸透させます。
圧力を均一化することで、ハウス全体でムラのない潅水が可能になります。
◎ 自動灌水システム
タイマー式、もしくは日射量連動型(ソーラーセンサー制御)が便利です。
太陽が出て光合成が活発な時だけ給水するように設定すれば、
過剰灌水を防ぎ、根を常に健全に保つことができます。
◎ データ連携
最近では、培地センサー(含水率・EC・温度)と連携し、AIが潅水量を自動調整する「スマート灌水」も普及中。
これにより、人の感覚に頼らない精密な水管理が実現します。
温度・湿度・環境管理設備 ― トマトにとっての“快適空間”を作る
トマトは、暑すぎても寒すぎてもダメ。
昼夜の温度差、湿度、CO₂濃度まで含めた総合的な環境制御が収量を左右します。
◎ 冷暖房装置
- 暖房機:冬場の夜温を10℃〜12℃に保つ。
- 冷房装置(ミスト・ファンパッド):夏場の高温を防ぎ、ハウス内を30℃前後に保つ。
燃料費はかかりますが、冬の果実品質を維持するためには必須です。
◎ 換気扇・サーキュレーター
空気を動かすことで、湿気の滞留を防ぎ、灰色かび病やうどんこ病の発生を抑えます。
換気は「朝の湿気を飛ばす」ことが最大の目的です。
◎ 遮光カーテン・保温カーテン
- 夏:強光や高温からトマトを守るための遮光。
- 冬:夜間の保温と放射冷却の防止。
カーテン開閉を自動化すれば、省エネ効果と品質維持の両立が可能です。
◎ 湿度センサー・CO₂センサー
湿度が高すぎると病害が発生しやすく、低すぎると花粉が乾いて受粉不良を起こします。
センサーを導入して60〜80%を維持することで、安定した着果と果実肥大を促進します。
また、CO₂濃度が700ppmを下回ると光合成が鈍化します。
CO₂施用機を導入することで、生産効率が10〜20%向上することもあります。
設備は“農業の相棒”である
トマトのハウス栽培における設備は、単なる機械ではなく「パートナー」です。
それぞれが果実の健康と品質を支える“生命維持装置”として機能しています。
しかし、最も大切なのは「設備をどう使いこなすか」。
データを信じすぎず、トマトの葉や果房を“読む”力を忘れないことです。
機械と自然、数字と感覚――。
その両方を調和させたとき、ハウスの中に理想のトマト環境が生まれます。
トマトの栽培方法 ― 養液栽培・土耕栽培・養液土耕栽培の違い
― 自分の圃場に合う「栽培スタイル」を選ぶ
トマトは栽培方法によって、味・収量・コストが大きく変わる作物です。
同じ品種でも、土で育てるか、養液で育てるか、それとも両方を掛け合わせるかで、まるで別のトマトになります。
ここでは、現代農業の主流となっている3つの栽培方式――「養液栽培」「土耕栽培」「養液土耕栽培」――を比較しながら、
それぞれの特徴と、私が採用している養液土耕栽培の魅力を詳しく紹介します。
養液栽培 ― 科学的に“最適化された”トマトづくり
養液栽培とは、土を使わずに、液体肥料(養液)でトマトを育てる方法です。
栄養分を溶かした養液を、ポンプで根元に循環させることで、トマトは必要な栄養を直接吸収します。
培地には、ロックウール・ココピート・ヤシ殻チップなどの無機・有機資材を使うのが一般的。
土の代わりに「根を支える構造体」として機能させます。
メリット
- 土壌病害(青枯病・萎凋病など)のリスクが低い
- EC(電気伝導度)やpHをコントロールし、栄養バランスを精密に管理できる
- 収量・品質の安定性が高く、長期栽培に適している
デメリット
- 設備投資が高い(養液タンク、ポンプ、配管、センサー類など)
- 電気トラブルやポンプ停止時にリスクが大きい
- 土壌微生物の働きが少ないため、果実の味わいが単調になりやすい
養液栽培は、データとテクノロジーで生育を「管理する」農業。
科学的で効率的な一方、“自然との対話”という感覚的な要素が薄れがちです。
土耕栽培 ― 伝統的で、生命力あふれる「土の農業」
一方、土耕栽培は昔ながらのやり方。
土の中の微生物やミネラル、根圏(こんけん)環境のバランスを活かしてトマトを育てます。
メリット
- 土壌中の微生物が豊富で、風味豊かで個性的なトマトになりやすい
- 初期費用を抑えられる(既存の畑で始められる)
- 電気や機械に頼らず、自然のリズムで栽培できる
デメリット
- 病害虫リスクが高く、連作障害が起こりやすい
- 土壌改良・肥料バランス調整に経験が必要
- 同じ条件でも収量・品質が年によって変動しやすい
土耕栽培の魅力は、「その土地の味」が出ること。
微生物・水・風・太陽が作る風味は、まさに“テロワールトマト”。
ただし、科学的な安定性を求めると、手間と時間がかかるのも事実です。
養液土耕栽培 ― 科学と自然の“いいとこ取り”
そして、私が採用しているのが、養液土耕栽培というハイブリッド方式です。
これは、土を使いながらも、養液栽培のように液体肥料を与える仕組み。
つまり、「土の力+科学の精密制御」の両立を目指した栽培法です。
培地には、地元の土や腐植質を活かしつつ、
養液タンクから点滴灌水システムで液肥を供給します。
ECやpHを測定しながら、土壌環境を“生きたセンサー”のように調整していきます。
養液土耕栽培の主な特徴
1. 病害虫リスクが低い
従来の土耕に比べて、養液を通じて常に一定の湿度・栄養を供給できるため、
根がストレスを受けにくく、青枯病や根腐れなどのリスクが軽減されます。
2. 栄養バランスを数値で管理できる
養液栽培と同様に、EC(電気伝導度)やpHを計測しながら肥料濃度を微調整します。
季節ごとの日射量に合わせて肥料配分を変えることで、糖度や酸味を自在にコントロールできます。
3. 土壌微生物の力を活かせる
土の中には、植物と共生する菌や微生物が無数に存在しています。
彼らが根からの老廃物を分解し、再び栄養として循環させることで、トマトは「自然な味わい」を取り戻します。
4. 初期投資を抑えられる
養液設備は簡易型で済むため、完全な養液栽培よりも導入コストを30〜50%程度削減できます。
既存のハウスを改良する形でも始められるのが大きなメリットです。
5. 収益性が高い
設備費を抑えつつ、品質・収量ともに安定しやすい。
管理精度を上げれば、1㎡あたり10〜12kgの収量も十分に可能です。
また、糖度が高くコクのある果実が得られるため、直販やブランド化にも向いています。
実際の運用イメージ
私のハウス(約1220㎡)では、
- 養液タンクを設置し、液肥を自動制御で点滴供給
- 土壌センサーでEC・pH・水分を測定
- トマトの様子に合わせて配合を変え、成長段階ごとに最適化
というシステムを採用しています。
これにより、土の持つ緩衝力を活かしつつ、科学的なデータで栽培を“見える化”しています。
まさに、「感覚とデータの融合」です。
養液土耕栽培の課題とコツ
どんな方式にも課題はあります。
養液土耕栽培の注意点は、データの過信と土壌管理の怠りです。
いくらセンサーで数字を管理しても、
土壌中の微生物や水分ムラは完全には可視化できません。
だからこそ、「葉の色」「茎の太さ」「花房のリズム」など、
植物自身のサインを観察する目が欠かせません。
また、数年ごとに培地の更新や太陽熱消毒を行い、
塩類や有機物のバランスを整えることも大切です。
“自然×科学”のハーモニーで理想のトマトを
養液土耕栽培は、
「安定した収量」と「味の深み」を両立できる、これからの時代のトマト農法です。
完全な人工制御ではなく、
自然の力を借りながら、人の知恵で環境を整えていく。
それはまさに、自然との共創型農業。
トマトにとって快適な環境を“設計”し、
人間にとっても心地よい労働の仕組みを“デザイン”する。
それが、養液土耕栽培という新しい農業のかたちです。
ハウスの規模別の概要
小規模ハウス(約100~300㎡)
初期費用目安:200万~500万円前後
家庭菜園の延長や、直売所・道の駅への出荷を目的とした小規模経営に向いています。
ハウス面積で言えば、30坪~90坪ほど。
一人、または夫婦で管理できる範囲であり、手作業中心の“感覚的な農業”が基本です。
メリット
- 初期投資が少なく、始めやすい
- 自分の目で全株を観察できる
- 少量多品種の栽培や、味重視の個性派トマトづくりが可能
デメリット
- 生産量が限られるため、収益は天候や価格変動に左右されやすい
- 労働効率が低く、設備投資の回収に時間がかかる
向いている人
「まずはトマトづくりを体感したい」「地域密着で直販をしたい」人におすすめ。
農業の感覚を身につける“実験のステージ”とも言える規模です。
中規模ハウス(約500~1000㎡)
初期費用目安:500万~1000万円前後
地域の市場や飲食店への安定供給を目指すなら、このクラスが中心になります。
作業面積は150坪〜300坪ほど。
人手が1〜3人程度必要で、一部自動化(潅水・換気・温湿度管理)を導入するケースが増えています。
メリット
- 経営として成り立つ規模で、安定した収益が期待できる
- 品質と収量の両立がしやすい
- SNS・ネット販売との相性が良く、ファンづくりが可能
デメリット
- 設備維持・光熱費・燃料費などの固定費がかかる
- 労働力の確保が課題(繁忙期は特に)
向いている人
「農業を事業として継続したい」「家族経営+少人数チームでやっていきたい」人に最適。
安定経営と品質追求のバランスが取れ、将来の拡大も視野に入れやすい規模です。
大規模ハウス(1000㎡以上)
初期費用目安:1000万~3000万円以上
全国出荷や契約販売、法人化を目指す経営型の規模。
1,000㎡(約300坪)を超えると、ハウス構造そのものが“システム化”されてきます。
AI環境制御・自動潅水・自動収穫補助など、IT技術を導入し「効率で勝つ」農業スタイルです。
メリット
- 大量生産・安定供給が可能で、販路拡大に強い
- データ経営ができる(CO₂濃度・EC・温湿度を数値管理)
- 労働効率が高く、人件費を抑えられる
デメリット
- 初期投資・維持費が非常に高い
- システムトラブル時のリスクも大きい
- 個人では管理が難しく、チーム経営が前提
向いている人
「全国にブランドを広げたい」「法人化・輸出を視野に入れたい」
そんな経営志向の強い農家や企業向き。
私のハウスの規模:1220㎡(約370坪)
私は現在、1220㎡(約370坪)の中〜大規模ハウスで栽培を行っています。
採用しているのは「養液土耕栽培」。
土の持つ生命力と、養液管理の精密さを両立させる方式です。
この規模では、作業動線・水管理・温湿度制御をデータで“見える化”することが必須になります。
1人で運営していますが、自動潅水・換気制御を導入し、
「人の感覚+データ」というハイブリッドなスタイルで管理しています。
“規模”は目的で選ぶ
トマトハウスの規模は、「どれくらいの収益を目指すか」によって変わります。
小規模は自由さ、中規模は安定性、大規模は効率性――。
どれが正解ということはなく、自分のライフスタイルや経営理念に合わせて選ぶのが最も大切です。
トマトは正直な作物です。
どんな規模でも、愛情と計画のあるハウスには、必ず応えてくれます。
次回に続きます。


