イマジンファーム・アップルトマト オリジナル農法でのトマトの作り方
イマジンファーム・アップルトマトのあるスギです。
今日は11月10日です。秋も深まり、そろそろ冬支度する時期です。
私が住んでいる地域では、11月中旬頃から暖房機を回してハウスを加温していきます。ウクライナ戦争以来、燃料代が高騰して経営を圧迫しています。燃料代だけでなく、肥料代、電気代、農薬代、資材代、あらゆるものが値上がりしています。
物価が上がった分、上手にトマトの販売価格に物価上昇分を上乗せしていかないと経営が苦しくなっていきます。値上げをすることが消費者が一番嫌がることなので、値上げはためらうのですが、生活して行くためにはしょうがないことです。
値上げしてもお客さんが離れず、喜んでくれるくらいの、甘くて美味しいトマトを作ることが一番大事なことだと思います。
他の生産者が出荷しているトマトとの差別化をはかる上でも、お客さんに逃げられないためにも、より安定した経営をするためにも圧倒的に美味しくて、品質の良いトマトを作る必要があります。
これからますます世の中は混乱してくるでしょう。この激動の時代を振り落とされず、上手に乗り越えて行くために、より一層、より真剣にトマト栽培と向き合っていかなくてはならないと思います。
トマト農家としての力量が試されている気がします。
今回はトマト栽培で最も重要な作業である灌水の仕方を書いていこうと思います。
私の農場では高度が8度〜12度程度のトマトを目標に作っています。なので基本、水を絞って栽培するので、水分コントロールを上手くすることが最も大事になってきます。
苗を定植してから収穫終わるまで、基本、節水管理です。しかし、要所要所で、灌水量を多くしたり、少なくしたり、少量多灌水で水管理するか多量小灌水で水管理するか違ってきます。
データに基づいた管理と勘や経験に基づいた管理を組み合わせながら、理想のトマトを作っていきます。
1番大事なのは、毎日丁寧に観察し、日々違う微妙な変化に気づくことです。そして、理想のトマトに近づけていくために、今どういう水管理をするのが最適なのか常に考えることです。
今の状況、3日後に持っていきたい状況、1ヶ月後に持っていきたい状況、日当たり、風の強さ、湿度、気温、日々変化する天候、全ての要因を取り入れ考えていかないといけません。
そして、今現在やらないといけない管理の最適解を見つけ出す必要があります。
経験がとにかく大事になる灌水の仕方ですが、今回は私が行なっている灌水方法、その際気をつけている要点などを出来るだけ詳しく書いていこうと思います。
灌水方法
水源
農場の敷地内に40mボーリングした深井戸と3mの浅井戸があり、そこからポンプで汲み上げています。
資材
タンク 500mlタンクに水と肥料を混入し、攪拌し、灌水していきます。
ポンプ 水中ポンプを使用して灌水します。
チューブ イスラエル製のストリームラインを使用しています。ドリップ穴10cm間隔のチューブを1畝に2本引いて使用しています。
ステージごとの管理
定植後
苗を定植後たっぷりと水を与えます。苗が活着後は水分を与えず、根張りを促進させます。幼苗は根の伸展が良く、水と肥料を過剰に吸収し、栄養成長に傾きやすくなるので、節水管理をして苗の暴走を食い止めます。
1段目開花
栄養成長に傾きすぎると、花芽分化が遅れるので、節水管理をして栄養成長と生殖成長のバランスを取る。3段目の花が咲くまでは、節水管理を基本とする。
3段目開花期
この生育ステージに入ってくると、水と肥料を多めに与えても株が暴走することはないので、定期的に灌水する。
果実の肥大のスピードが速くなって行き、水と肥料の要求量が増すので、灌水不足で樹勢が弱らないように気を付ける。
このステージで節水管理しすぎると、株の樹勢が弱って後々まで回復しづらくなるので、定期的な灌水をして、根張りを促進させ、これから沢山果実を実らせても、着果負荷に負けない株を作る。
多量小灌水で灌水して、株が萎れたら灌水するを繰り返し、根張りを促進させながら、かつ水分ストレスをかける。
5段目開花期
株の成長と果実の着果負荷に負けないように、3段目開花期より水と肥料の量を増やす。
糖度の高いトマトを目指すならこの生育ステージから節水管理を本格化していく必要があります。基本は株の先端部分が萎れてきたら少量灌水するスタイルです。
しかし、あまり水分ストレスをかけると樹勢が弱ってしまうので、株と果実の生育を落とさないギリギリのところで水分ストレスをかけ栽培管理していく必要があります。
株が萎れたら少量多灌水を繰り返し、糖度、ビタミン、栄養素の詰まったトマトを作っていく。
収穫期
最も株に着果負荷がかかる時期です。樹勢を落とさないように定期的に灌水しながらも、節水管理して、水分ストレスをかけて行く必要があります。
1段目の収穫が終盤になって行く頃には、着果負荷が若干軽減され、樹勢が回復してきます。新芽の伸長が良くなり、品質の良い花が咲いてきます。
このステージまで来たら、少しキツめの水分ストレスをかけても樹勢が弱りません。完熟した果実を収穫すると同時に新しい果実を結実させる。このサイクルが収穫終了前まで続きます。
季節の変化、気温の変化、天候の変化によって、灌水量や回数は変わってきます。しかし、基本は株が萎れて来たら灌水、と言うスタイルは変わりません。
灌水量、灌水回数
1回の灌水量の目安
定植後
隔離培地の下穴から水が出るまでたっぷり灌水します。
1段目開花期
1株あたり400ml〜500ml灌水
3段目開花期
1株あたり700ml〜800ml灌水
5段目開花期
1株あたり1000ml灌水
少量多灌水
水分ストレスを頻繁にかけたい場合に行う。
少ない水量を回数多く流す為、水みちができやすくなる。根が張る範囲が狭くなり、長期間、少量多灌水栽培だと根張りが制限される為、樹勢が弱くなる傾向がある。
灌水回数が多くなるので、手間暇がかかる。
多量小灌水
根張りや株の生育を回復させたい場合に行う。
1度に多くの水を灌水するので、水みちができにくく、根域が広くなり根張りが良くなる。
水分ストレスを与えすぎて、栄養成長に傾きすぎた株をバランスの良い草姿に整える。
培養土中に水分が多い状態が続くと、根腐れを起こして樹勢が弱くなる場合があるので、長期間、加湿状態が続かないように気を付ける。
水分が多いと果実は大きく、重くなり、収量は多くなります。しかし、味は淡白で、青臭く、糖度も低くなるので、糖度の高い果実を作ろうと思うなら、定期的に加湿と乾燥を繰り返す必要があります。
天候の変化による灌水の方法
晴天の場合
定期的な灌水を行う。水分ストレスを与えすぎないように気を付ける。
曇天が長期間続いた後、晴れたら株が萎れやすくなるので、朝、日が当たる前に灌水する。
雨、曇りの場合
基本、灌水しない。少し萎れ気味でもOK。
長期間天気が悪い日が続いて、培養土中が加湿状態なら、根腐れを起こす場合があります。また、果実の糖度が上がらなくなります。
天気予報をしっかり確認して計画的に灌水する。
節水管理による病害虫への影響
節水管理を続けていると茎葉の細胞壁が硬くなり、病害虫に対する抵抗力が付きます。ストレスを受けて成長したトマトは生命力が強くなり病害虫を寄せ付けなくなります。結果的に減農薬に繋がります。
カルシウム欠乏症
培養土中の水分量が少ないと、カルシウムを吸収しづらくなり、尻腐れが多発することがあります。また、根の活力が落ちると養水分を吸い上げる能力が低下するので、常に活力の高い根の状態を維持することが大事です。
トマトトーン散布時における注意点
強めの節水管理をしている場合は、開花した花が貧弱で花粉の量が少なくなる場合があります。なので前日に灌水を行い樹勢を回復させ、品質の良い花を咲かせることが大事になります。
また尻腐れ防止にもなります。
糖度を上げるために必要なこと
私が考える糖度を高めるために最も重要な要因は、水分ストレスをトマトに与えることです。
水分ストレス以外にも肥料からの影響、日照量による光合成の同化産物からの影響など考えられますが、実際、高糖度トマト栽培していて確実に糖度の上昇に影響していると感じるのは、水分を絞ってストレスを与えながら栽培することです。
肥料も日照量も少しは影響があると思いますが、私は特段、糖度を上昇させる要因としては意識して栽培はしていません。もちろん健全な株、果実を作る上では重要視しなければならない要因ではあります。
しかしただ単に水分ストレスを与えれば良いと言うわけではありません。根張りを良くし、株の樹勢を維持した状態で、出来る限りの水分ストレスを与えることが大事になります。
健全な株と果実の成育を損わないまま、ギリギリまで水分ストレスを与えます。ストレス下で育ったトマトは少ない水分を得るために、根を四方八方に伸ばします。また、空気中から水分を得ようと産毛を生やし、必死になって生きていこうとします。結果、トマトの生命力が満ち満ちて、ガッチリと強固な草姿となります。そして果実は、内容物が凝縮した、濃厚で甘みとコクがあり、栄養素がたっぷりと詰まった果実が実ります。
高糖度栽培する上で目安になる草姿の状態
茎葉が全体的にコンパクトで、葉が上向きになっている。
成長点の形 成長点から開花した花までの長さが短く、5cm前後。葉が内側に巻き込んでいない。
果実のベースグリーン 果実の肩のあたりに緑色の模様が入る、成熟するにつれ消える。
葉の色は濃い緑で、葉のサイズは小ぶりで、しっかりとした厚みがあり、平らである。
左が節水管理している葉、右が普通栽培の葉
茎の太さは10㎜前後で、硬く、弾力がある。
茎や果実からびっしりと小さな産毛が生えている。節水管理によって土壌中の水分が少ないので、空気中から水分を補給する。