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ビートルズの宇宙を旅して (2)

ビートルズと変化、進化

イマジンファーム・アップルトマトのあるスギです。

今回は私が個人的に最もビートルズらしいところだと思う

・バランス間隔

・変化、進化

・笑い、遊び心

の内ビートルズと変化、進化について深ぼっていこうと思います。

ビートルズはキャリアを重ねるにつれ、作風が変わり、音楽的にも、思想的にも、技術的にも進化していきました。世界中、数多あるバンドの中でこれほどまでに劇的に進化し、また人々に認められたバンドは他にいません。

作風が変化、進化していった音楽家は他にも、クラシックではベートーベンやラヴェル、ジャズではマイルス・デイヴィスやハービーハンコック、ロックでは70年代のデヴィッド・ボウイ、80年代のプリンスなどがいます。あとは、エルヴィス・コステロ、我が国の佐野元春などが、作品毎に新たな価値観を創り出し、我々を楽しませてくれます。

他の芸術では、絵画のピカソ、小説の夏目漱石 などがいます。

彼らに共通する特徴は、創造的探究心と飽くなき挑戦心を持ち、常に新しい表現を求める向上心があります。同じスタイルや技法を繰り返すと、自己満足や停滞感が生まれる可能性があります。進化し続けることで、彼らは自分自身を刷新し、飽きることなく創造性を保つことができます。自己表現の限界を超え、新しい領域へと芸術の可能性を切り開いていきます。

20世紀文化の最大の変革者たちだよね。そして今なお、世界に多大な影響を与えているね。


ビートルズがものすごい勢いで進化していった最大の原動力はなんといっても、ジョン・レノンとポール・マッカートニーという天才が同じグループにいたことに尽きると思います。

ロックンロールが好きという以外、音楽的特徴も性格も違う天才2人が、協力し合い、刺激し合い、ライバルとして切磋琢磨していく過程でお互い才能が開花し、成熟し、あふれんばかりの音楽的創造力が革新的かつ普遍的な数々の名曲を創り出し、前人未到の芸術作品の数々を築き上げていきます。

音楽プロデューサーのジョージ・マーティンの存在もビートルズの音楽的進化に大きく貢献しています。彼の、豊富な音楽的知識と、イギリス人らしからぬ柔軟な思考、発想が、これまでに無い新しい音楽を生み出す源泉となっている。

ビートルズが進化し続けた理由は他にも、彼らの創造性、好奇心、音楽的挑戦心、そして当時の文化的影響が大きく関係しています。

いくつか要点をピックアップしていきます。

・音楽的探求心: 常に新しい音楽スタイルや技術に興味を持ち、それを自分たちの音楽に取り入れようとしました。初期の頃のロックンロールやR &B、モータウンから、中期、後期にはサイケデリックロックやクラシック、ジャス、ソウル、インド音楽、アヴァンギャルドな要素まで、さまざまなジャンルを探求しています。

・ライバル意識と影響: 当時の音楽シーンで他のアーティストと競い合いながら、同時に影響を受けていました。特に、ボブ・ディランやビーチ・ボーイズのようなアーティストからの影響を受け、自分たちの音楽に新しい要素を取り入れるようになりました。

・個々の成長と個性の発展: 各メンバーが音楽的に成長し、それぞれの個性が際立つようになりました。ジョン・レノンのボブ・ディランに影響を受けた、作詞面での自己表現の深化と哲学性、ポール・マッカートニーのメロディメーカーとしての才能と音楽的教養、ジョージ・ハリスンのインド音楽への傾倒とソングライターとしての成長などが、グループ全体の音楽に多様性をもたらしました。

・技術的革新: スタジオ技術にも積極的に取り組み、新しい録音技術やエフェクトを使って音楽を進化させました。彼らはスタジオを実験の場として捉え、『リボルバー』や『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』などのアルバムでその成果を示しています。

・時代の変化: 1960年代は社会的、文化的に激動の時代であり、その影響を強く受けたビートルズは、音楽を通じてその変化を反映しようとしました。戦争や政治的な問題、カウンターカルチャーの台頭などが彼らの音楽にも反映されています。

激動の60年代の先頭を走り抜け、音楽を変え、文化を変え、若者の意識を変え、愛と平和と自由を時代に刻み込み、新しい時代の扉を開けました。


ビートルズの音楽は、前期、中期、後期の3つの時期に分けられ、それぞれで異なる音楽的特徴や進化が見られます。

1. 前期(1962年〜1964年頃)

特徴:

・ロックンロールとR &B: この時期のビートルズは、シンプルでキャッチーなメロディーラインと、ロックンロールの影響を受けたギターサウンドが特徴です。エルヴィス・プレスリーやチャック・ベリーなどのアメリカのロックンロールやリズム&ブルースから影響を受け、若々しくエネルギッシュなサウンドを展開しました。

・シンプルな編成: ギター、ベース、ドラムスを主体としたバンド編成で、スタジオ録音も比較的シンプルです。歌詞も恋愛や青春をテーマにしたものが多く、幅広い層に受け入れられました。

・ライブ重視:若さとエネルギーに満ち、バンドの一体感が1番充実していた時期で、ライブ、コンサートに最も力を入れて活動していた。世界中を駆けずり周り、多くのファンを魅了していた。

2. 中期(1965年〜1967年)

特徴:

・音楽的実験と多様性: 中期のビートルズは、音楽的により多様なスタイルを取り入れるようになり、ソウル、フォークロック、クラシック、ジャズ、インド音楽など、様々なジャンルの要素を融合させました。この時期には、より複雑な曲構成や実験的な録音技術も取り入れられ、スタジオでの作業が音楽制作の中心となっていきます。西洋と東洋の音楽、文化を結びつける。

・深みのある歌詞: 歌詞のテーマも進化し、より内省的で哲学的な内容が増え、社会的なメッセージも含まれるようになりました。

・サイケデリックとアートロック: この時期のビートルズは、サイケデリックロックやアートロックの影響を強く受け、音楽はさらに実験的かつ多層的になりました。テープループ、逆回転録音、シタールなどの楽器を使った複雑な編曲が行われ、アルバム全体が一つの芸術作品として捉えられるようになりました。

・アルバム主義: シングルヒットよりも、アルバム全体の統一感やテーマ性を重視する傾向が強まりました。特に「Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band」はコンセプトアルバムの先駆けとして評価されています。

3. 後期(1968年〜1970年)

特徴:

・シンプルなサウンドに回帰:前作までのサイケデリックなサウンドをあっさりとやめて、シンプルで原点回帰したサウンドを追求し始める。楽曲の質はより高くなり、普遍性を増します。

・哲学的で内面的な歌詞:メンバーそれぞれが自分自身の経験や、感情を反映した楽曲を制作しています。哲学性はいっそう深みを増し、自己の内面を見つめる視点はより鋭く、赤裸々になっていきます。

・個々のメンバーの独立性:この時期、メンバーそれぞれが個別に曲を作り、個性が際立つようになりました。グループとしての一体感は次第に薄れつつあり、各曲がメンバーのソロ活動への移行を予感させます。

・サウンドの多様性:「ホワイトアルバム」から続く多様な音楽スタイルがさらに発展し、ロック、バラード、ブルース、フォーク、実験音楽など、幅広いジャンルがアルバム内に共存しています。西洋音楽の集大成。

・技術的進化:スタジオ技術の発展に伴い、より洗練されたサウンドプロダクションが実現しました。「アビーロード」では、8トラックレコーダーやシンセサイザーを使用し、以前よりも多層的なサウンドを作り出しています。

ビートルズは、60年代という時代のトップランナーで常にあり続け、時代を巻き込み、包み込み、煌びやかに多彩に音楽的進化を遂げ、至極の芸術作品を作り出し、伝説となった。

60年代に現れた1組のロックンロールバンドという枠組みに収まらず、ビートルズ自体がひとつのジャンルであり、ひとつの文化なのだと思います。

たった8年という短い期間で驚異的な進化だね。


ビートルズの進化について考える時、私はいつも夏目漱石の作風の変化、進化を思い出します。

この2組における進化のスタイルは、他の芸術家とは違って独特の共通点があると思います。

夏目漱石(1867-1916)は、日本の明治時代の文学者で、心理描写と社会批判を巧みに融合させた作品で知られています。初期の作風は自然主義に影響を受けており、ユーモラスで娯楽性が高く、中期から後期にかけては、より個人的な内面の探求や哲学的なテーマが顕著になります。代表作には『吾輩は猫である』や『こころ』があります。

それぞれ異なる分野で活躍し、異なる文化背景を持ちながらも、彼らの作品が進化する過程には共通する要素が見られます。

 ・初期から後期へのテーマの深化

  初期作品: ビートルズも夏目漱石も、キャリアの初期には比較的軽快でポップなテーマを扱っています。ビートルズの初期の楽曲は、恋愛や青春をテーマにしたシンプルで明るいものが多く、漱石の初期作品もユーモラスで風刺的な作風が特徴的です(例:『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』)。

後期作品: 時間が経つにつれて、両者はより複雑で深いテーマに取り組むようになります。ビートルズは社会問題や哲学的なテーマに取り組み(例:『Revolution』や『Let It Be』)、夏目漱石も内面の葛藤や人間関係の複雑さを深く掘り下げた作品を生み出します(例:『それから』や『行人』)。

・個人的な体験や内面の反映

 ビートルズ: ビートルズはキャリアの中で、自分たちの内面の変化や社会的な経験を反映させた作品を作り続けました。(例;「Help!」や「In My Life」)など、個人的な体験が色濃く反映された楽曲が次第に増えていきました。

夏目漱石: 漱石もまた、作家としての経験や個人的な内面的な葛藤を作品に反映させました。特に『こころ』や『明暗』では、自己との対話や人間関係の緊張感が強く描かれています。漱石の作品は、彼自身の病気や死生観の変化とともに、より内省的で深い内容になっています。

 ・実験的・革新的なアプローチ

 ビートルズ: ビートルズはキャリアを通じて音楽的な実験を重ねました。中期以降、彼らはスタジオ技術を駆使し、サイケデリックな音楽や多種多様な楽器を取り入れるなど、常に新しい音楽の可能性を探求しました(例:『I  Am The Walrus』や『Tomorrow Never Knows 』)。

夏目漱石: 漱石もまた、伝統的な文学の枠を超えた実験的な手法を取り入れました。例えば、『夢十夜』のような幻想的な短編や、『明暗』における深層心理の描写など、従来の日本文学にはなかった手法で自己表現を試みました。

・社会への反映と批判

ビートルズ: 彼らの作品は、1960年代の社会変革やカウンターカルチャーに深く影響され、またそれに影響を与えました。例えば、「Revolution」や「A Day in the Life」では、社会や政治に対する批判的な視点が見られます。

夏目漱石: 漱石も、明治時代の急激な西洋化や社会変動に対する批判的な視点を作品に反映させています。『三四郎』や『それから』では、現代日本における個人と社会の対立や矛盾が描かれています。

・ 最終的な到達点としての内面的成熟

ビートルズ: 最終的にビートルズは、シンプルで普遍的なメッセージに回帰し、「Let It Be」や「Across The Universe」など、自己と世界の関係に対する成熟した視点を示す楽曲を生み出しました。

夏目漱石: 漱石は晩年、「則天去私」という境地に至り、自己を超えたより大きな自然の摂理や存在を受け入れる姿勢を示しました。これは彼の最晩年の作品『明暗』に反映されており、内面的な成熟の到達点と言えます。


夏目漱石の作品もビートルズと同様、前期、中期、後期と作品のスタイルが変わっていきます。

・前期の軽快なユーモアと風刺に満ちた娯楽性が強調された時期。

・中期の多彩で実験的な文学表現と内省的で深い心理描写が強調された時期。

・後期のより深い哲学的探究と人間存在の根本的な問題や自己の超越がテーマの時代。

進化のスタイルがシンクロしているのがお分かりでしょうか?

漱石が彼の創作活動の到達点として最後に辿り着いた境地は「則天去私」という言葉でした。

自己を捨てて自然の摂理に従うことを意味します。エゴを抑え、自然や天命に従って生きるという考え方です。

そうです、あの「あるがままに」です。「Let It Be」です。

夏目漱石が最終的に辿り着いた境地と、ビートルズが辿り着いた境地が共に同じ「あるがままに」なのであります。

時代も国もジャンルもスタイル(構成人数)も違う2組ですけど、共に同じような創作活動の軌跡を辿り、共に同じ哲学的境地に辿りついた、特別な使命を持って選ばれた芸術家の、宇宙的意志、宇宙的直感力に導かれた創作活動だったのかもしれません。

ビートルズと夏目漱石だけでなく、一つの道を極めた人が最終的にたどり着くのが「あるがまま」なのかもね。


ビートルズの創作活動の進化の軌跡は、たんに作風の芸術的進化、思想の深淵化だけにとどまらず、文明のサイクルの縮図(文明の発生、繁栄、崩壊)を表している気がします。

いや、文明だけではなく、人間の生涯、国家の歴史、宇宙の進化の過程までをも表している気がします。

この三次元地球の科学者がいくら頑張っても、AIが驚異的に進化しても、宇宙の真理には今後1000年たっても到達出来ないでしょう。なぜなら、あまりにも真の宇宙の姿と我々はレベルが違いすぎているからです。理解できても3パーセント〜5%くらいのものです。

生まれたての赤ちゃんとスーパーコンピューターほど能力がかけ離れています。

しかし、理論的に科学的に理解できなくても、感覚的に直感的に全体像を把握することはできます。

それは人間に授けられた、いや、全ての生命に宿された最も素晴らしい能力です。

古来、先人たちは宗教、哲学、芸術の分野で宇宙の真の姿を、圧倒的な想像力と美的感覚と真理の言葉で表現してきました。

私は、ビートルズの構造が宇宙の構造と相似上であり、ビートルズの謎を解くことが、宇宙の謎を解くことに繋がると本気で考えています。

宇宙の進化の先には何があるのでしょうか?

宇宙は何故生まれ、どのような終わり方をするのでしょうか?

ビートルズは、デビュー曲「Love Me Do」 の中で『愛して欲しい』と歌い、ラストアルバム「Abbey Road」の最終曲「The End」 の中で『あなたの受け取る愛は、あなたが与える愛に等しい』と歌ってます。

この宇宙の創造主は、本当の愛を求めてこの宇宙を創り、永遠の旅路の果て、本当の愛を手に入れた時がこの宇宙の終焉なのかと思います。

そして本当の愛を手に入れるには、全てを愛する事だとビートルズは教えてくれています。

それはまた、我々人間にも通じる普遍的真理だと思います。

ビートルズはいろんな角度からいろんな考察ができると思います。自由な発想で新しいビートルズの魅力を見つけ出すのも楽しいものです。


次回はビートルズと笑い、遊び心について深ぼっていきたいと思います。

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