甘くて美味しい完熟トマトの作り方 コンプリートバージョン (29)

トマトの作り方

ひとり農家の私が、トマト農家として長く続けるための経営戦略 1

ひとり農家として生きるという選択

イマジンファーム・アップルトマトのあるスギです。

農業という仕事は、本来、家族や地域の協力のもとに成り立ってきた営みです。しかし、時代が変わり、機械化や情報化が進んだ現代では、「ひとりで農業をやる」という選択肢も現実的になってきました。私はこの道を選び、すべての作業――土づくりから定植、管理、収穫、販売まで――を一人で行っています。効率を追う企業農業とも、昔ながらの大家族農業とも違う、第三のスタイルです。

現代の農業には課題が山積しています。高齢化による後継者不足、慢性的な人手不足、価格競争の激化、資材費や燃料費の高騰。さらに気候変動が収量や品質に影響を与え、経営は年々不安定になっています。そんな中で「ひとり」で農業を続けるのは、無謀に思えるかもしれません。しかし私は、その厳しさの中にこそ“自由”“手応え”を感じています。

自分の手で苗を植え、トマトの実が光を浴びて赤く色づいていく――その瞬間に立ち会う喜びは、何ものにも代えがたい。すべてを自分の判断で進めることで、失敗も成功も自分の糧になります。大量生産ではなく、自分の技術と情熱で生み出す“独自性とこだわり ”こそが、ひとり農家の強みだと思うのです。

このブログでは、私が実践してきた「ひとりでも続けられる農業経営」の考え方と具体的な戦略を紹介します。
目指すのは、規模を追わず、持続可能で、心と体を壊さない働き方。
「ひとりで続ける」ことをゴールに据えた新しい農業モデル――それが、これからの時代に求められる“人間らしい農業”のかたちだと信じています。

現場の現実と理想のギャップ

ひとりでトマトを栽培し、出荷し、販売まですべて行う――。言葉にすれば簡単ですが、実際の現場は想像以上に過酷です。早朝からの潅水、温度管理、病害虫のチェック、収穫、選別、袋詰め、配送、そしてSNSやサイトの更新。これらすべてを一人で回す日々は、まさに時間との戦いです。季節によっては1日が20時間あっても足りないように感じるほど。とくに収穫期は体力と気力が試される時期で、同時に最も収入に直結する大切な時期でもあります。

農業は「作る」だけでは生き残れません。いくら良いトマトを育てても、売り先がなければ収入はゼロです。逆に、販売ばかりに時間を取られると、畑の管理が疎かになり品質が落ちてしまう。つまり、農家は「生産者」であると同時に「経営者」でなければならないのです。これがひとり農家にとって最も難しい現実であり、同時にやりがいでもあります。

時間と体力には限りがあります。とくに一人農家の場合、病気やケガをしても代わりがいません。だからこそ、無理をしすぎることは経営上のリスクでもあります。繁忙期と閑散期の波が大きい農業では、年間を通じた「ペース配分」と「仕組み化」が不可欠です。たとえば、収穫後の片付けや次作の準備をルーチン化する、データを残して翌年の改善に活かす、資材や肥料をまとめて購入してコストを削減するなど、地味でも効率化の積み重ねが経営を安定させます。

そして何より重要なのは、「理想」と「現実」のバランスを取ることです。
理想のトマトを追求するあまり、収量や利益を度外視してしまうと続きません。反対に、利益だけを優先すると品質が下がり、自分自身の生産者としての誇りを失います。理想とは現実に根ざした努力の延長線上にあるもの。経営とはその理想を数字に変える作業でもあります。ひとり農家に求められるのは、夢と現実の間で、冷静に舵を取るバランス感覚です。

トマトを一つひとつ丁寧に育てながら、効率と美味しさの両立を目指す。
それが、ひとり農家が現場で日々向き合っている「理想と現実の間の戦い」なのです。

効率的な生産体制の構築

ひとり農家にとって最も大切なのは、「限られた時間と体力で、どれだけの成果を安定的に出せるか」という一点に尽きます。
トマト栽培は手間がかかり、毎日の細やかな観察と調整が求められる作物です。だからこそ、効率化と省力化の仕組みづくりが、長く続けるための鍵になります。

ハウス栽培の自動化と省力化

トマトの品質を安定させるためには、温度・湿度・CO₂濃度・日射量など、環境要素をできる限り一定に保つことが重要です。
そのために導入すべきなのが、自動環境制御システムです。

近年は、スマートフォンからでもハウス内の温度や潅水量を遠隔で確認・操作できるシステムが普及しています。温度センサーと換気扇を連動させれば、猛暑日でも自動で換気・遮光を行い、植物のストレスを軽減できます。また、自動潅水システムを導入することで、潅水作業にかかる時間を大幅に削減できるうえ、適切な水分管理により糖度や品質の安定化にもつながります。

さらに、環境データの記録化も大切です。ハウス内の温度変化・潅水量・日照時間などを日々記録しておけば、次作での改善が容易になります。アナログなノート記録でも構いませんが、クラウド型のデータロガーを使えば、年間を通した環境変化をグラフ化でき、病害発生や収量との相関を視覚的に把握できます。これは「勘と経験」に頼る農業から、「科学的判断」に進化させる第一歩です。

作業のルーチン化と時間管理

一人で働く上では、「作業の順序を決めること」も重要です。毎日同じリズムを維持することで、効率が上がり、ミスも減ります。

たとえば、午前中は集中作業の時間。太陽が昇ってから昼までの時間は、植物が最も活発に活動するタイミングであり、人間の集中力も高い。
この時間に「収穫」「誘引」「摘果」などの体力と集中を要する作業を行います。

そして、午後は管理・記録・出荷・販促など、比較的静的な作業に充てる。
この時間配分を意識するだけで、一日の疲労感が大きく変わります。

さらに、作業スケジュールを「見える化」することもポイントです。
ホワイトボードやアプリで、作業予定・優先順位・作業完了日を記録。これにより、仕事の抜け漏れを防ぎ、「今日は何をやるべきか」で迷う時間を減らせます。

品種選定戦略

品種の選び方も、経営効率に直結します。
大量収穫を目指すのではなく、「ひとりで扱える量で、最高の品質を維持できる品種」を選ぶことが大切です。

たとえば、高糖度トマトは収量こそ少なめでも単価が高く、ブランド化しやすい。反対に、病気に強い耐病性品種は、農薬や管理コストを抑えられ、労力を減らせます。希少品種を選べば、少量でも差別化が可能です。

私が栽培しているタキイの大玉トマト「桃太郎ファイト」、中玉トマト「フルティカ」は糖度が上がりやすく濃厚な味で、他の生産者が出荷しているトマトと差別化を図りたい方にお勧めです。

収穫期を分散させる計画栽培

一度に大量収穫して一気に出荷するスタイルは、大手農家には向きますが、ひとり農家にはリスクが大きい。
天候や市場価格の変動に左右されやすく、体力的にも負担が重くなります。

そこで有効なのが、収穫期を分散させる計画的な作型設計です。
定植の時期をずらしたり、ハウスを複数棟持つ場合は生育ステージをずらすことで、出荷を長期化できます。

さらに、トマトは環境によって味が変わります。夏と冬では糖度の上がり方が違うため、それぞれの季節に合った栽培環境を整えることが、品質面でもリスク分散になります。

データを活かした生産管理

ひとり農家にこそ必要なのが「見える経営」です。
感覚だけに頼らず、データを残して次に活かすことで、毎年の成長を積み重ねられます。

具体的には、

  • 収量(kg/m²)
  • 糖度(Brix値)
  • 病害発生状況
  • 気温・湿度・日射量
  • 肥料施用量とタイミング

などを記録します。これをもとに「なぜこの年は味が良かったのか」「なぜ収量が落ちたのか」を検証し、翌年の施肥・潅水・温度管理に反映させます。

このPDCAサイクル(Plan・Do・Check・Action)を毎年繰り返すことで、作業は年々洗練され、結果的に“経験の積み上げがデータで見える化”されていきます。
また、蓄積したデータは補助金申請や販促資料としても有効です。数字に基づいた説明は説得力を持ち、取引先との信頼構築にもつながります。

まとめ

効率的な生産体制とは、単に「楽をする仕組み」ではなく、限られた力を最大限に活かす仕組みです。
自動化、ルーチン化、データ化――これらを組み合わせることで、ひとりでも安定した経営が可能になります。

農業は自然が相手の仕事です。完全に思い通りにいくことはありません。
しかし、努力の方向を「管理」から「改善」に変えるだけで、日々の仕事は驚くほど軽く、そして意味あるものになります。
それが、ひとり農家が“長く続けるための技術”であり、“生きるための経営術”なのです。

販売戦略:小規模でも勝てる売り方

どれだけ良いトマトを作っても、「売れなければ意味がない」。
ひとり農家の経営を安定させるためには、“作る力”と同じくらい“売る力”が必要です。大量生産や価格競争に巻き込まれず、少量でも高収益を上げるためには、「どこで・誰に・どう売るか」を明確にすることが鍵になります。

直販とブランド化の重要性

市場に出すだけでは、価格は相場に左右されます。安い時期には採算が取れず、頑張っても利益が薄くなる。だからこそ、直販ルートの確立が重要です。
直売所・マルシェ・通販サイトなど、自分で価格を決め、自分の言葉で価値を伝えられる場所を持つことが、ひとり農家の生存戦略です。

直販の強みは、「人」が見えること。
消費者は“誰が作っているか”に共感し、安心して購入してくれます。たとえスーパーで少し安いトマトが売っていても、「この農家のトマトじゃなきゃ」と思ってもらえれば、価格競争から脱却できます。

そのために必要なのが、ブランド化です。

ブランドとは、大企業のような派手なロゴや広告ではなく、「一貫した想いとストーリー」のこと。
「どんな土で育てているのか」「どんな信念で作っているのか」「どんな人に食べてもらいたいのか」――これらをSNSやホームページで丁寧に発信していくことで、“ひとりの農家”が“ひとつの物語”として輝きます。

SNSとECの活用

いまや農業もネットの時代。SNSを使えば、全国のファンとつながれます。
Instagramでは「見た目の美しさ」で惹きつけ、X(旧Twitter)では「日々のリアルな農作業」を発信する。ブログでは「トマトづくりの哲学」や「農家の生き方」を語る。
それぞれの媒体で異なる角度から自分の農業を表現することで、信頼と共感が積み上がっていきます。

また、自社サイトでの販売(EC化)は、ひとり農家にとって強力な武器です。
プラットフォーム手数料が高い大手モールに頼らず、WordPressやBASEなどの簡易サイトを活用すれば、少ないコストで始められます。

さらに、顧客情報を自分で管理できるため、定期購入の提案やメールでの案内もスムーズに行えます。

SNS→ECサイト→発送という流れを「一人でも回せる仕組み」に整えることができれば、安定した売上を生む“ファンベース型経営”が可能になります。

リピーターを育てる仕組み

ひとり農家の強みは、“人間的な温かさ”にあります。
一度買ってくれたお客様に、もう一度買ってもらう――これが最も効率的な販促です。

そのためにお勧めなのが、定期便モデルです。
「月に1回、旬のトマトをお届けします」という仕組みを作ることで、安定収入とリピート率の向上を両立できます。
お客様にとっても、毎月の楽しみが増える。そこに「農家の顔」が見える手紙や季節の一言を添えれば、商品以上の価値が生まれます。

また、購入後のフォローも大切です。
SNSでお客様が投稿してくれた写真にコメントを返す、収穫時期に感謝のメッセージを送る――そうした小さな積み重ねが信頼につながり、長期的な関係を築いていきます。

販路の多角化

販売ルートを一つに絞ると、リスクが大きくなります。
だからこそ、規模は小さくても複数の販路を持つことが重要です。

  • 地元スーパーや直売所との契約:地元の顧客層に安定的に販売できる。
  • 飲食店・カフェへの直接販売:味や品質を重視する料理人との関係構築。
  • 加工業者や道の駅との連携:規格外トマトの有効活用。
  • ふるさと納税への出品:地域ブランド化のチャンス。

特に飲食店との直接取引はおすすめです。料理人は素材にこだわり、ストーリー性を重視する人が多い。定期契約を結べれば、安定収入につながりますし、「◯◯農園のトマトを使用」とメニューに載れば、最高の広告にもなります。

小規模でも勝てる「物語のある販売」

今の時代、最も強い販売力とは、“心が動くストーリー”です。
SNS時代に入り、お客様は「誰が、どんな想いで作っているか」で買う時代になりました。

たとえば、「土壌改良に3年かけたトマト」「一日100個限定の完熟収穫」「太陽恵みと海から届く潮風に育まれた生命力あふれるトマト」――こうした背景が伝わるだけで、商品は“特別なもの”に変わります。

トマトそのものの美味しさはもちろん大切ですが、それ以上に「このトマトに関わる物語」を届けることが、ファンを生み出す販売です。
そして、それは大規模農家にはできない、ひとり農家ならではの魅力でもあります。

まとめ

販売とは、単にお金を得る行為ではなく、“自分の想いを社会に届けること”です。
直販、SNS、ブランド化、リピーター、販路の多角化――これらを組み合わせることで、ひとり農家でも安定的に収益を上げることができます。

トマト一粒の背後にある「努力」「情熱」「物語」を丁寧に伝える。
それこそが、小さな農家が大きな市場で輝き続けるための、最も確かな戦略なのです。

コスト構造と利益率の最適化

トマト農家として長く続けていくためには、「いかに利益を安定して残すか」が最も重要なテーマです。どれだけ理想的なトマトを作っても、経費がかさみ赤字になってしまっては継続できません。ひとり農家が持続的に経営を続けるためには、“コストを最適化し、無理のない利益構造を築く”ことが不可欠です。

固定費・変動費を正確に把握する

まず必要なのは、「自分の農業経営にどんなお金がかかっているか」を明確にすることです。
ハウス栽培の場合、主な固定費は次のようなものです。

  • ハウス建設・修繕費
  • 暖房・冷房設備
  • 減価償却費(設備投資の分割償却)
  • 光熱費(電気・燃料)
  • 土地・水道・通信費

一方、変動費としては、

  • 種苗・肥料・農薬
  • 資材(支柱・マルチ・トレーなど)
  • 段ボール・ラベルなどの包装資材
  • 運送・出荷コスト

などが挙げられます。

これらの支出を「月ごと」「作期ごと」に整理し、“1kgのトマトを作るのにいくらかかっているか”を知ることが経営の第一歩です。

感覚的に経営していると、気づかないうちに資材コストや燃料費が増え、赤字が積み上がることがあります。データで経営を“見える化”することで、無駄な支出を減らし、利益の上がる構造を作れます。

助成金・補助金を味方につける

次に注目したいのが、国や自治体の補助金制度です。
たとえば、ハウスの修繕、燃料費削減、環境制御装置の導入などには、国の「持続的生産強化事業」や「省エネ設備導入補助金」などを活用できる場合があります。

また、新規就農者向けには「青年等就農給付金」などの制度もあり、年間150万円(最大5年間)の支援を受けられるケースもあります。

こうした制度を使えば、初期投資を抑えつつ生産効率を上げることが可能です。

補助金は書類が煩雑で敬遠されがちですが、自治体の農業改良普及センターやJAの担当者と相談すれば、手続きをサポートしてくれることが多いです。“使えるものは使う”という柔軟さも、経営者としての大事な資質です。

コスト削減と品質維持の両立

コスト削減というと、「質を下げて節約する」イメージを持つ人も多いですが、重要なのは“賢く減らす”ことです。

たとえば、肥料を見直す場合。
高価な化成肥料を多用するよりも、単肥肥料を購入して自分で配合して自作の肥料を作ることで、費用を抑えることが出来ます。

また、堆肥や有機質肥料をうまく組み合わせることで、土壌改良とコスト削減の両方を実現できます。
さらに、微生物資材やバイオスティミュラントを導入することで、根張りを良くし、病害に強い作物を育てれば、農薬コストも下げられます。

燃料費の削減には、ハウスの断熱化温度管理の最適化が有効です。
例えば、二層の外幕フィルム張る、内幕を二重にする、定期的にフィルムの隙間が開いてないか点検する、夜間の暖房使用で変温管理を実施する。

コストを削ることは「節約」ではなく、「仕組みの改善」だと考えるのがポイントです。

高付加価値商品で単価を上げる

もう一つの利益向上策は、「売値を上げる」こと。
量を増やせないひとり農家にとって、単価の引き上げは最も効果的な方法です。

まず最も大事なのは、お客様が何度も買いたくなるような「こだわりの味」です。たくさん売っているトマトの中で、いつも選んでもらえるような「圧倒的な美味しさ」をいつでも提供出来るような技術を持つことが重要です。

また、パッケージやネーミングを工夫すれば、商品は「農産物」から「ブランド商品」へと昇華します。

さらに、ギフトや定期便などの付加価値型販売も有効です。
「お中元・お歳暮トマト」「季節限定フルーツトマト」など、限定性を持たせることで、少量でも高価格で販売できます。

「大量に売る」から「想いとこだわりの味を届ける」へ――。
これが、ひとり農家が取るべき販売の方向性です。

小規模経営だからこその柔軟性

小規模農家は、大きな投資をすぐに回収するのは難しいですが、その分、意思決定が速く、柔軟に動けます。
新しい栽培方法を試す、販路を切り替える、SNSでキャンペーンを打つ――こうした動きを自分一人の判断で即日実行できるのは、ひとり農家ならではの強みです。

また、失敗しても損失を最小限に抑えられる。
規模が小さいからこそ、試行錯誤を繰り返しながら最適な経営スタイルを見つけやすいのです。

つまり、小さい=不利ではなく、機動力があるということ。
そのスピード感こそが、変化の激しい時代を生き抜くひとり農家の武器になります。

まとめ

経営を安定させるためには、単に「コストを下げる」だけでは不十分です。
重要なのは、「最小のコストで最大の価値を生む構造」を作ること。

固定費の見直し、補助金の活用、品質を保ちながらの省エネ化、そして高付加価値商品の開発――これらを総合的に組み合わせることで、ひとりでも安定した利益を出すことができます。

農業は自然相手の仕事であり、年によって収入が変動するのは避けられません。
だからこそ、無理なく続けられる経営スタイルを作ることが、何よりの“リスク対策”になります。

「続けるための利益」
その発想こそが、ひとり農家の経営を強く、そして長く支える基盤となるのです。

次回に続きます。

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