現役農家が語る 自給自足サバイバル完全ガイド(5)

自給自足サバイバル

釣りは最強のサバイバル技術である|自然から魚を得るための実践ガイド

釣りは最強のサバイバル技術である|自然から魚を得るための実践ガイド

自然から動物性たんぱく質を得る、最も現実的な方法

自給自足サバイバルを考える時、多くの人はまず野菜、芋、米、豆などの植物性食料を思い浮かべます。
これは正しい方向です。長期的に食料を確保するなら、畑で育てられる作物が基本になります。

しかし、もう一つ大きな課題があります。

それが、動物性たんぱく質をどう確保するかです。

人間は、米や芋だけでも一時的には命をつなぐことができます。
しかし、長期的に考えると、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンをどう補うかが重要になります。

大豆、小豆、インゲンなどの豆類は、自給自足における重要なたんぱく源です。
けれども、自然の中から動物性たんぱく質を得る方法として考えた時、最も現実的なのは、狩猟よりも釣りです。

狩猟には、銃、罠、免許、経験、解体技術、法律知識、安全管理など、多くのハードルがあります。
一方、釣りは比較的少ない道具で始められ、道具も軽く、備蓄しやすく、海・川・池・湖など水辺が近い地域では実用性があります。

もちろん、釣りも「どこでも自由にできる」わけではありません。
漁業権、禁漁期間、釣ってよい魚種、持ち帰り制限、サイズ制限、使用できる道具など、地域ごとのルールがあります。
しかし、ルールを守って平時から練習しておけば、釣りは非常時の食料確保として大きな力になります。

なぜサバイバルでは釣りが強いのか

釣りがサバイバルに向いている理由は、いくつかあります。

第一に、道具が小さく軽いことです。

釣り糸、針、オモリ、ウキは、非常に小さく、軽く、場所を取りません。
米や水のように重くなく、リュックや防災袋、車の中にも入れておけます。

第二に、動物性たんぱく質を得られる可能性があることです。

魚には、たんぱく質だけでなく、脂質やミネラルも含まれます。
野菜や芋だけでは不足しがちな栄養を補う助けになります。

第三に、狩猟より心理的・技術的なハードルが低いことです。

鳥獣を捕るには専門的な知識と許可が必要です。
それに比べると、釣りは趣味として始めやすく、平時から練習しやすい技術です。

第四に、地域によっては身近な水辺で実践できることです。

海の近くに住む人なら堤防や磯。
川の近くに住む人なら河川。
湖や池が近ければ淡水魚。
地域の環境によって、食料確保の選択肢が広がります。

第五に、釣れなくても道具が無駄になりにくいことです。

釣り糸は結束にも使えます。
ナイフは調理や作業にも使えます。
バケツは水汲み、収穫、洗浄にも使えます。
塩は保存にも調味にも使えます。

つまり釣り道具は、釣り以外にも応用が利くのです。

サバイバル用に備えておきたい釣り道具

サバイバル目的で釣り道具を備えるなら、豪華な釣具は必要ありません。

大切なのは、軽い・壊れにくい・使い回せる・保管しやすいことです。

釣り糸

釣り糸は、サバイバル釣りの中心になる道具です。

おすすめは、扱いやすいナイロンラインです。
細すぎる糸は切れやすく、太すぎる糸は魚に警戒されやすくなります。
初心者なら、まずは小物釣りに使いやすい太さを用意しておくとよいです。

釣り糸は、魚を釣るだけでなく、物を縛る、簡易的な補修をする、小物を吊るすなどにも使えます。

針は小さく、軽く、備蓄性が非常に高い道具です。

大きな魚用の針だけでなく、小魚用の針も用意しておくと実用的です。
サバイバルでは、大物を狙うよりも、まず釣れやすい小魚を確実に狙う方が現実的だからです。

針は錆びることがあるため、小さなケースに入れて湿気を避けて保管します。

ウキ

ウキは、魚のアタリを目で確認するための道具です。

初心者にとっては、ウキがある方が釣りやすくなります。
魚が餌をつつくとウキが動くため、タイミングを取りやすいからです。

ただし、サバイバル用としては、必ずしも立派なウキでなくても構いません。
小さな木片、発泡素材、コルクなどで代用できる場合もあります。

オモリ

オモリは、餌を狙った深さや場所に沈めるために使います。

流れのある川や、海での釣りでは特に重要です。
軽いオモリと少し重いオモリを数種類持っておくと対応しやすくなります。

小型竿

小型竿は、持ち運びやすさを重視します。

本格的な長い竿でなくても、コンパクトロッド、振り出し竿、短い延べ竿などが使えます。
車や防災用品に入れておくなら、折りたたみ式やコンパクトなものが便利です。

最悪の場合、竿がなくても、竹や枝を使って簡易竿にすることはできます。
ただし、普段から一度は試しておかないと、非常時に急に使うのは難しいです。

ナイフ

ナイフは、魚を締める、さばく、餌を切る、枝や竹を削る、ロープを切るなど、多目的に使えます。

サバイバル装備の中でも、ナイフは非常に重要です。

ただし、持ち歩きには法律やマナーへの注意が必要です。
釣り場やキャンプ場など正当な目的がある時に、安全に管理して使う意識が必要です。

バケツ

バケツは地味ですが、かなり重要です。

釣った魚を入れる。
水を汲む。
道具を洗う。
野菜を洗う。
収穫物を運ぶ。
雨水を受ける。

折りたたみバケツなら、収納性も高く、防災用品としても便利です。

塩は、釣った魚を保存する時に役立ちます。

魚は傷みやすい食材です。
釣ったら早めに内臓を処理し、加熱するか、塩を使って保存性を高めます。

塩焼き、塩漬け、干物など、塩は魚を食料として活かすための重要な道具です。

サバイバルでは「大物狙い」より「小物を確実に狙う」

釣りというと、大きな魚を釣るイメージがあります。

しかし、サバイバル目的では、大物狙いはあまり現実的ではありません。

大きな魚は、釣るのが難しく、道具も強いものが必要で、場所や時間にも左右されます。
それよりも、小魚を確実に釣る方が現実的です。

小魚でも、数が集まれば貴重なたんぱく源になります。
小さな魚は、丸ごと調理できるものもあり、骨や内臓の処理も比較的簡単です。

サバイバル釣りで大切なのは、ロマンではなく確実性です。

一匹の大物より、数匹の小魚。
一発勝負より、繰り返し釣れる場所。
珍しい魚より、身近で釣れる魚。

この考え方が大切です。

場所選びが釣果を決める

釣りは、道具だけでなく場所選びが重要です。

魚がいない場所でどれだけ粘っても、釣れません。

川で狙う場所

川では、魚が身を隠せる場所や、餌が流れてくる場所を狙います。

たとえば、

  • 流れのゆるい場所
  • 深み
  • 石の裏
  • 草や木の陰
  • 合流地点
  • 橋の下
  • 流れ込み
  • 岸際

などです。

川魚は、流れの中で餌を待っています。
流れが速すぎる場所よりも、少し流れが緩む場所や、障害物の近くが狙い目です。

海で狙う場所

海では、

  • 堤防
  • 漁港
  • テトラ周辺
  • 岩場
  • 海藻の周辺
  • 河口
  • 常夜灯の下
  • 潮通しのよい場所

などがポイントになります。

ただし、港や堤防には立入禁止区域もあります。
足場が滑りやすい場所や波をかぶる場所も危険です。

安全第一で考える必要があります。

池・湖で狙う場所

池や湖では、

  • 岸際
  • 水草の周辺
  • 流れ込み
  • 日陰
  • 障害物の周り
  • 浅場と深場の境目

などが狙い目になります。

魚は、餌がある場所、身を隠せる場所、水温が安定する場所に集まりやすいです。

餌をどう確保するか

釣りには餌が必要です。

平時なら釣具店で餌を買えば済みます。
しかしサバイバルでは、餌も自分で確保する必要が出てきます。

自然で使える餌

  • ミミズ
  • 昆虫
  • 幼虫
  • 小さなエビ
  • 貝の身
  • 魚の切り身
  • 米粒
  • パン
  • 練り餌
  • 野菜くず
  • サナギ粉などの保存餌

淡水ではミミズが使いやすいです。
畑や落ち葉の下、湿った土の中にいることがあります。

海では、貝の身、小エビ、魚の切り身などが餌になります。

ただし、餌を採る場所にもルールや所有権があります。
また、腐った餌は衛生面で危険です。

サバイバル用に備えるなら

釣り餌は保存が難しいものも多いですが、練り餌の粉、乾燥餌、小分けの人工餌などは備蓄しやすいです。

ただし、餌だけに頼らず、現地で餌を見つける力も必要です。

農家的には、畑の土を豊かにしておくとミミズも増えます。
土づくりは、釣り餌の確保にもつながる。ここが面白いところです。

釣った魚を安全に食べる

魚は貴重な食料ですが、傷みやすい食材でもあります。

釣った後の処理が悪いと、食中毒の原因になります。

基本の流れ

  1. 釣る
  2. できるだけ早く締める
  3. 内臓を取る
  4. 水で洗う
  5. 塩を使う
  6. 加熱して食べる
  7. 余る場合は干す・塩漬け・冷蔵・冷凍する

特に大切なのは、内臓の処理です。

魚の内臓は傷みやすい部分です。
気温が高い時期は、早めに処理しないと劣化が進みます。

生食は避ける

サバイバルでは、刺身のような生食は避けるべきです。

川魚には寄生虫のリスクがあります。
海魚でも鮮度管理が不十分だと危険です。

基本は、焼く、煮る、蒸す、揚げるなど、しっかり加熱して食べます。

小魚の利用

小魚は、唐揚げ、佃煮、味噌汁、干物などにできます。

骨ごと食べられるサイズなら、カルシウムの補給にもなります。
ただし、喉に骨が刺さらないよう注意が必要です。

塩の重要性

魚をサバイバル食に変えるには、塩が強い味方になります。

塩焼き。
塩漬け。
干物。
保存用の下処理。

塩は、調味料ではなく保存技術の中心です。

だから、防災備蓄や自給自足サバイバルでは、塩を多めに持っておく価値があります。

魚を保存食にする方法

釣った魚をその場で全部食べられない場合、保存を考えます。

干物

魚を開き、内臓を取り、塩をして干します。
風通しがよく、清潔で、虫がつきにくい場所で干す必要があります。

干物は、天候に左右されます。
湿度が高い時期は傷みやすいので注意が必要です。

塩漬け

魚に塩をまぶし、保存性を高めます。
ただし、塩だけで完全に安全になるわけではありません。
温度管理や衛生管理も必要です。

煮つけ・佃煮

小魚は、醤油、砂糖、みりんなどで煮詰めると保存性が上がります。
非常時には調味料が限られるため、塩煮や味噌煮も考えられます。

燻製

煙でいぶして保存性を高める方法です。
ただし、温度管理や乾燥が必要で、初心者には少し難易度があります。

釣りをサバイバルキットに組み込む

釣り道具は、サバイバルキットに入れておく価値があります。

なぜなら、非常に小さな道具で、食料を得る可能性を増やせるからです。

小型サバイバル釣りキット例

  • ナイロンライン
  • 小魚用の針
  • 少し大きめの針
  • 小型のウキ
  • ガン玉オモリ
  • スナップ
  • 小型ハサミ
  • 糸巻き
  • 小さな疑似餌
  • 予備のビニール袋
  • 小型ナイフ
  • 塩の小袋

これらを小さなケースに入れておけば、かなりコンパクトにまとまります。

車に積むなら

車に余裕があるなら、

  • コンパクトロッド
  • 小型リール
  • 折りたたみバケツ
  • 魚つかみ
  • ナイフ
  • クーラーボックス
  • 手袋

を入れておくと、より実用的です。

家に備えるなら

家の備えとしては、

  • 竿
  • リール
  • 仕掛けセット
  • オモリ
  • ウキ
  • 魚をさばく包丁
  • まな板
  • 保存容器
  • 干し網

まで用意しておくと、釣るだけでなく、食べる・保存するところまで対応できます。

釣りで大事なのは「技術」より「慣れ」

釣り道具を持っていても、使ったことがなければ非常時には役立ちません。

糸の結び方が分からない。
針の結び方が分からない。
餌のつけ方が分からない。
魚の外し方が分からない。
どこで釣ればいいか分からない。
釣った魚をさばけない。

これでは、いざという時に困ります。

だから、平時から練習しておくことが大切です。

まず覚えたいのは、

  • 糸を結ぶ
  • 針を結ぶ
  • ウキをつける
  • オモリをつける
  • 餌をつける
  • 魚を外す
  • 魚を締める
  • 内臓を取る
  • 焼く・煮る
  • 塩をして保存する

です。

釣りは、知識だけでは身につきません。
実際に水辺に行き、竿を出し、失敗することで少しずつ覚えます。

自給自足と同じです。
畑も、種をまいてみないと分かりません。
釣りも、糸を垂らしてみないと分かりません。

法律と地域ルールを必ず確認する

サバイバル目的であっても、平時の練習では必ず法律と地域ルールを守る必要があります。

水産庁は、遊漁で使える漁具・漁法、禁止区域、禁止期間、魚種ごとの大きさの制限、夜間照明の制限などが、法律や都道府県の漁業調整規則で定められていると説明しています。

また、川や湖などの内水面では、漁協が漁業権対象魚種の採捕について遊漁規則を定め、制限している場合があります。アユ、ヤマメ、イワナ、ニジマス、ワカサギなどは、地域によって遊漁券が必要になることがあります。

海でも注意が必要です。アワビ、サザエ、ワカメ、コンブ、エビ、タコなどの定着性の水産動植物は、漁業権の対象になっている漁場で組合員以外が採ると、漁業権侵害になるおそれがあります。

つまり、釣りは現実的なサバイバル技術ですが、採ってよいもの・採ってはいけないもの・使ってよい道具・入ってよい場所を確認することが大前提です。

確認すべきこと

  • その場所で釣りをしてよいか
  • 遊漁券が必要か
  • 禁漁期間はあるか
  • 持ち帰ってよい魚種か
  • サイズ制限はあるか
  • 使ってよい釣り方か
  • 立入禁止区域ではないか
  • 貝や海藻を採ってよい場所か
  • 外来魚の扱いはどうするか

なお、外来生物については、釣った特定外来生物をその場で放すキャッチ・アンド・リリースは外来生物法上の規制対象にはならない一方で、持ち帰って飼うことや別の場所へ移動して放すことは禁止される例があります。

釣りを自給自足サバイバルにどう組み込むか

釣りは、単独で食料をまかなう方法ではありません。

毎日必ず釣れるわけではありません。
天候にも左右されます。
季節にも左右されます。
水辺が近いかどうかにも左右されます。

だから釣りは、主食確保の中心ではなく、補助的なたんぱく源として考えるのが現実的です。

基本戦略はこうです。

主食は、米、芋、乾麺、豆で確保する。
野菜は、畑や家庭菜園で育てる。
保存食は、味噌、梅干し、乾物、漬物で補う。
動物性たんぱく質は、釣りで補う。
釣った魚は、すぐ食べるか、塩や乾燥で保存する。

このように考えると、釣りは自給自足サバイバルの中で非常に強い位置を持ちます。

特に、海や川が近い地域では、平時から釣りを覚えておく価値があります。

現役農家目線で見る「釣り」の本当の価値

現役農家の視点で見ると、釣りの価値は単に魚を得ることだけではありません。

釣りは、自然を読む訓練になります。

水の流れ。
風向き。
水温。
季節。
時間帯。
魚の気配。
虫の動き。
潮の満ち引き。
雨の後の濁り。
日陰と日なた。

こうしたものを観察する力は、農業にも通じます。

農業も、自然を読む仕事です。

土の乾き。
葉の色。
風の向き。
朝露の出方。
虫の増え方。
病気の出方。
気温の変化。
雨の降り方。

釣りも農業も、自然を支配する技術ではありません。
自然の動きを読み、その中で少しだけ恵みをいただく技術です。

だから、自給自足サバイバルにおける釣りは、食料確保の技術であると同時に、自然と向き合う訓練でもあります。

釣りは、小さな道具で大きな可能性を持つサバイバル技術である

自給自足サバイバルにおいて、釣りは非常に現実的な技術です。

狩猟より始めやすく、道具は小さく、軽く、備蓄しやすい。
魚が釣れれば、貴重な動物性たんぱく質になります。
釣り糸や針、ナイフ、バケツ、塩は、釣り以外にも応用できます。

ただし、釣りは万能ではありません。
必ず釣れるわけではなく、場所、季節、天候、技術、地域ルールに左右されます。

だからこそ、釣りは「主食の代わり」ではなく、食料確保の選択肢を増やす技術として考えるべきです。

米や芋で腹を満たす。
豆でたんぱく質を補う。
野菜で栄養を整える。
保存食で季節を越える。
そして釣りで、自然から動物性たんぱく質を得る。

この組み合わせが、自給自足サバイバルをより強くします。

最後に一言でまとめるなら、こうです。

釣り糸と針は、小さな道具です。しかし、それは自然の中から命をつなぐための、大きな可能性を持った道具なのです。

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