第2部 生き残るための食料備蓄
第5章 家族人数別・備蓄量の目安

― 1人暮らしから大家族まで、どれだけ備えれば安心なのか
備蓄を始めようと思った時、多くの人が最初に迷うのが「どれくらい用意すればいいのか」という問題です。
水は何本必要なのか。
米は何kg置いておけばいいのか。
缶詰は何個あれば足りるのか。
家族4人なら、どのくらいの量になるのか。
一週間分と一か月分では、どれほど違うのか。
備蓄は、少なすぎれば不安です。
しかし、多すぎても管理が大変です。
大量に買い込んだものの、置き場所に困る。賞味期限が切れる。何をどれだけ持っているか分からなくなる。結局使いこなせず、無駄にしてしまう。
これでは、備蓄とは言えません。
備蓄は「買い込むこと」ではなく、「暮らしの中で回せる量を持つこと」です。
大切なのは、家族の人数、年齢、食事量、持病、アレルギー、住環境、収納スペース、調理手段に合わせて、現実的に備えることです。
本章では、1人暮らし、2人暮らし、3人家族、4人家族、5人以上の家庭を想定しながら、食料備蓄の目安を具体的に解説していきます。
備蓄量は「3日分」から始め、「1週間分」を目標にする
まず基本として、備蓄は段階的に考えるのがよいです。
最初から一か月分を用意しようとすると、量が多くなりすぎて挫折しやすくなります。置き場所も必要ですし、管理も大変です。
そこで、まずは3日分を目標にします。
災害が起きた直後は、物流やライフラインが一時的に混乱する可能性があります。道路が通れない、店が閉まる、停電する、断水する、配送が遅れる。こうした初期の混乱を乗り切るために、最低3日分の水と食料を家に置いておくことが基本です。
次に、1週間分を目標にします。
近年の災害を見ると、被害が大きい場合、数日で完全に元通りになるとは限りません。物流が戻るまで時間がかかることもあります。断水や停電が長引くこともあります。だから、できれば1週間分を備えておくと安心です。
そして余裕があれば、2週間分、1か月分へと増やしていきます。
ただし、ここで大事なのは、期間が長くなるほど「非常食だけ」ではなく「普段使う食材」を中心にすることです。
3日分なら、レトルト食品や缶詰、カップ麺でも乗り切れます。
しかし1週間以上になると、栄養の偏りや飽きが出てきます。
1か月分となると、日常の食生活として使い回せる備蓄でなければ続きません。
そのため、備蓄は次の三段階で考えると分かりやすいです。
第一段階は、3日分の緊急備蓄。
第二段階は、1週間分の生活備蓄。
第三段階は、1か月分の長期備蓄。
緊急備蓄は、すぐ食べられるものを中心にします。
生活備蓄は、米、味噌、缶詰、乾物、乾麺を組み合わせます。
長期備蓄は、ローリングストックとして普段の食事に組み込みます。
備蓄は、一気に完成させるものではありません。
暮らしながら育てるものです。
まず3日分。
次に1週間分。
余裕ができたら2週間分。
最終的に1か月分。
この順番で増やしていけば、無理なく家庭の食料安全保障を高めることができます。
水の備蓄量の目安
備蓄の中で、最も優先すべきものは水です。
水がなければ、人は生きられません。食料があっても、水がなければ米を炊けません。乾麺も茹でられません。手洗いや歯磨き、トイレ、簡単な洗い物にも水は必要です。
飲料水の目安は、一般的に1人1日3リットルです。
これは飲む水だけでなく、最低限の調理に使う水も含めた目安です。ただし、実際には暑い季節、体格の大きい人、妊婦、授乳中の人、病気の人、高齢者、乳幼児がいる家庭では、さらに余裕を持った方がよいです。
まずは、家族人数ごとの水の目安を考えてみます。
1人暮らしの場合、3日分なら9リットル、1週間分なら21リットルです。2リットルのペットボトルなら、3日分で5本程度、1週間分で11本程度になります。
2人暮らしの場合、3日分なら18リットル、1週間分なら42リットルです。2リットルペットボトルなら、3日分で9本、1週間分で21本です。
3人家族の場合、3日分なら27リットル、1週間分なら63リットルです。2リットルペットボトルなら、3日分で14本、1週間分で32本ほどです。
4人家族の場合、3日分なら36リットル、1週間分なら84リットルです。2リットルペットボトルなら、3日分で18本、1週間分で42本です。
5人家族の場合、3日分なら45リットル、1週間分なら105リットルです。2リットルペットボトルなら、3日分で23本、1週間分で53本ほどになります。
こうして見ると、水の備蓄はかなりの量になります。
4人家族で1週間分を用意しようとすると、2リットルペットボトルが42本です。これはなかなかの量です。だからこそ、水は一か所にまとめず、分散して置くことが大切です。
台所。
押し入れ。
物置。
玄関近く。
車。
二階。
可能であれば、複数の場所に分けて保管します。地震で家具が倒れたり、浸水で一階が使えなくなったりすることもあるからです。
また、飲料水とは別に、生活用水も考えておきたいところです。風呂の残り湯、ポリタンク、雨水タンク、給水袋などがあると、トイレや洗い物に使えます。
飲み水はペットボトル。
生活用水はポリタンクや風呂水。
さらに可能なら浄水器や携帯浄水器。
このように役割を分けると、水の備えは強くなります。
水は重く、場所も取ります。しかし、備蓄の中では最優先です。
食料より先に、まず水を確認しましょう。
米の備蓄量の目安
日本の家庭で、主食の中心にしたいのは米です。
米は保存しやすく、腹持ちがよく、さまざまなおかずと合わせやすい。災害時や食糧危機の時にも、ご飯が炊けるだけで食卓の安心感は大きく変わります。
では、米はどのくらい備えればよいのでしょうか。
目安として、大人1人が1日に食べる米の量を、乾燥した米で約1.5合から2合と考えます。1合は約150gなので、1日あたり225gから300gほどです。
もちろん、食事量には個人差があります。朝はパン、昼は麺、夜だけご飯という家庭もあるでしょう。逆に、毎食ご飯をしっかり食べる家庭ではもっと必要になります。
ここでは分かりやすく、1人1日あたり米2合、つまり約300gを基準に考えます。
1人暮らしなら、3日分で約900g、1週間分で約2.1kg、1か月分で約9kgです。
2人暮らしなら、3日分で約1.8kg、1週間分で約4.2kg、1か月分で約18kgです。
3人家族なら、3日分で約2.7kg、1週間分で約6.3kg、1か月分で約27kgです。
4人家族なら、3日分で約3.6kg、1週間分で約8.4kg、1か月分で約36kgです。
5人家族なら、3日分で約4.5kg、1週間分で約10.5kg、1か月分で約45kgです。
こうして見ると、4人家族で1週間分なら10kgの米袋が一つあれば、おおむね安心できます。ただし、毎食米を食べる場合はもう少し余裕を見てもよいでしょう。
1か月分になると、4人家族で30kg以上が目安になります。これはかなりの量です。保管場所や虫対策も必要になります。
米の備蓄で大切なのは、ただ大量に置くことではありません。古くならないように回すことです。
おすすめは、常に米を一袋多く持つ方法です。
たとえば普段5kgずつ買う家庭なら、5kgを開けたら次の5kgが家にある状態にします。そして開封したら新しい5kgを買い足す。このようにすれば、常に一定量の米があり、古くなりにくくなります。
家族が多い家庭なら、10kg袋を二つ持つのもよいです。
一つを使い始めたら、一つを補充する。
これだけで備蓄力はかなり上がります。
玄米を備える方法もあります。玄米は精米より保存性が高く、栄養もあります。ただし、炊き方に慣れが必要です。玄米を備えるなら、普段から少し食べておくことが大切です。
米は、備蓄の王様です。
しかし、水と火がなければ食べられません。
米を備える時は、必ず水、カセットコンロ、ガスボンベ、鍋もセットで考えましょう。
主食の備蓄は米だけに偏らせない
米は備蓄の中心ですが、主食を米だけにする必要はありません。
災害時や食糧危機の時には、食事の単調さが大きなストレスになります。毎日ご飯だけでは飽きます。そこで、乾麺、パスタ、餅、レトルトご飯、オートミール、小麦粉などを組み合わせると、食卓に変化が出ます。
家族人数別に考えるなら、1週間分の主食備蓄として、米を中心にしながら、麺類やその他の主食を少し足すのが現実的です。
1人暮らしなら、米2kgから3kgに加えて、乾麺やパスタを3食から5食分、レトルトご飯を数個置いておくと安心です。
2人暮らしなら、米5kg前後に加えて、乾麺やパスタを6食から10食分、レトルトご飯を4個から6個ほど用意するとよいでしょう。
3人家族なら、米5kgから10kgに加えて、乾麺やパスタを10食分前後、レトルトご飯を6個から9個ほど置いておくと便利です。
4人家族なら、米10kg前後に加えて、乾麺やパスタを12食から16食分、レトルトご飯を8個から12個ほど用意すると、主食の選択肢が増えます。
5人以上の家庭なら、米10kg以上を中心に、乾麺やパスタを20食分前後、レトルトご飯も人数分に応じて多めに備えると安心です。
ここで大事なのは、主食を「食事回数」で考えることです。
一週間は7日です。
一日3食なら21食です。
4人家族なら、21食×4人で84食分が必要になります。
ただし、84食すべてを別々に用意する必要はありません。米を炊いて家族全員で食べる場合は、米の量としてまとめて考えられます。麺やレトルトは、補助として考えるとよいです。
乾麺やパスタは保存性がありますが、調理に水と燃料を使います。水が少ない時には、レトルトご飯や缶詰パン、クラッカー、餅のようなものも役立ちます。
餅も優秀な備蓄食品です。個包装の切り餅は保存しやすく、焼く、煮る、雑煮にする、きな粉をつけるなど、いろいろな食べ方ができます。高齢者や小さな子どもは喉に詰まらせる危険があるため注意が必要ですが、家庭によっては心強い主食になります。
主食の備蓄は、米を中心にしながらも、複数の種類を持つこと。
これが、飽きずに続けるコツです。
缶詰・レトルト食品の目安
缶詰やレトルト食品は、備蓄の中でも非常に実用的です。
理由は、すぐ食べられるからです。
米や乾麺は、水と火が必要です。しかし、缶詰やレトルト食品は、最悪そのまま食べることもできます。特に停電や断水、ガスが使えない時には、調理不要の食品があると助かります。
目安としては、1人1日1個から2個の缶詰・レトルト食品を考えるとよいです。
1人暮らしなら、3日分で3個から6個、1週間分で7個から14個。
2人暮らしなら、3日分で6個から12個、1週間分で14個から28個。
3人家族なら、3日分で9個から18個、1週間分で21個から42個。
4人家族なら、3日分で12個から24個、1週間分で28個から56個。
5人家族なら、3日分で15個から30個、1週間分で35個から70個。
数字だけ見ると多く感じるかもしれませんが、缶詰やレトルトは一食に一人一個使うとは限りません。
たとえば、サバ缶一つを家族で分け、ご飯と味噌汁を組み合わせることもできます。トマト缶一つでパスタソースを作ることもできます。レトルトカレーは一人一袋が基本ですが、具材を足せば増やすこともできます。
おすすめは、次のように種類を分けることです。
魚の缶詰。
肉の缶詰。
豆の缶詰。
トマト缶。
コーン缶。
レトルトカレー。
レトルト丼。
レトルトスープ。
パウチ惣菜。
魚の缶詰は、ご飯に合い、たんぱく質も補えます。サバ、イワシ、ツナ、鮭などをそろえておくと便利です。
レトルトカレーは、子どもにも食べやすく、満足感があります。温めなくても食べられるものもありますが、温めた方がおいしいので、カセットコンロとセットで考えます。
豆の缶詰は、カレー、スープ、サラダ、煮物に使えます。肉や魚が少ない時のたんぱく源にもなります。
缶詰・レトルト食品の備蓄で大切なのは、普段から食べているものを選ぶことです。非常時に初めて食べる食品は、口に合わないことがあります。家族全員が食べられるか、辛すぎないか、アレルギーはないか、子どもや高齢者でも食べやすいかを確認しておきましょう。
缶詰・レトルトは、「非常時の主役」でもあり、「日常の時短食材」でもあります。普段から使い、使った分を補充することで、無理なく備蓄できます。
乾物・調味料の目安
備蓄を長く続けるためには、乾物と調味料が欠かせません。
米や缶詰だけでは、食事が単調になります。そこに味噌、塩、醤油、だし、乾燥わかめ、高野豆腐、切り干し大根、干ししいたけなどが加わると、食卓の幅が一気に広がります。
まず調味料です。
最低限備えたいのは、味噌、塩、醤油、砂糖、酢、油です。
1人暮らしなら、味噌750gから1kg、塩500g、醤油500mlから1L、油一本程度があれば、しばらく使えます。
2人暮らしなら、味噌1kgから2kg、塩1kg、醤油1L、油1本から2本。
3人から4人家族なら、味噌2kg前後、塩1kg、醤油1Lから2L、油2本程度。
5人以上の家庭なら、味噌2kgから3kg、塩1kg以上、醤油2L前後、油2本以上を目安にするとよいでしょう。
もちろん、普段の消費量によって調整します。味噌汁を毎日飲む家庭と、あまり飲まない家庭では必要量が違います。
次に乾物です。
1人暮らしなら、乾燥わかめ1袋、高野豆腐1袋、切り干し大根1袋、干ししいたけ少量、海苔や昆布などを少しずつ。
2人暮らしなら、それぞれ1袋から2袋。
3人から4人家族なら、乾燥わかめ2袋、高野豆腐2袋、切り干し大根2袋、干ししいたけ1袋から2袋。
5人以上の家庭なら、各2袋以上を目安にし、普段の料理で使いながら補充します。
乾物は軽くて場所を取らず、保存性が高いので、備蓄に非常に向いています。ただし、湿気には注意が必要です。開封後は密閉容器やチャック付き袋で保存しましょう。
調味料と乾物の良さは、少ない食材でも食事らしくしてくれることです。
米と味噌と乾燥わかめがあれば、ご飯と味噌汁になります。
高野豆腐があれば、たんぱく質も補えます。
切り干し大根があれば、食物繊維も取れます。
干ししいたけがあれば、だしと旨味が出ます。
非常時には、豪華な食事よりも、温かくて落ち着く食事が大切です。
その中心になるのが、味噌汁です。
味噌汁を作れる備蓄がある家庭は強いです。
野菜・果物の備蓄量の考え方
野菜や果物は、備蓄の中で最も難しい分野です。
生鮮野菜は長期保存が難しく、季節や保存環境によって傷み方が変わります。しかし、野菜が不足すると、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しやすくなります。
そこで、野菜の備蓄は「日持ちする野菜」「乾燥野菜」「缶詰・瓶詰」「冷凍野菜」「家庭菜園」を組み合わせて考えます。
まず日持ちする野菜です。
じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、さつまいも、かぼちゃ、大根、白菜、キャベツなどは、比較的保存しやすい野菜です。
1人暮らしなら、じゃがいも数個、玉ねぎ数個、にんじん数本、さつまいも数本、かぼちゃ半分から一個程度でも、かなり役立ちます。
2人暮らしなら、その倍程度。
3人から4人家族なら、じゃがいも1袋、玉ねぎ1袋、にんじん1袋、さつまいも数本、かぼちゃ1個程度を常備すると安心です。
5人以上の家庭なら、これらをやや多めにし、傷む前に使い切れる量を見極めます。
野菜は多く買いすぎると腐らせます。備蓄のつもりが食品ロスになってしまいます。だから、日持ちする野菜もローリングストックが基本です。
次に乾燥野菜です。
乾燥わかめ、切り干し大根、干ししいたけ、乾燥ねぎ、乾燥キャベツ、野菜ミックスなどは、人数に関係なく少しずつ持っておくと便利です。
野菜ジュースやトマト缶も補助になります。完全に生野菜の代わりにはなりませんが、災害時には心強い存在です。
果物については、日持ちするりんご、みかん、バナナなどを普段から少し余裕を持って買う方法があります。ただし長期備蓄には向きません。長期用には果物缶、ドライフルーツ、ジャムなどが便利です。
家族人数別に考えるなら、1週間分の野菜補助として、乾物を数袋、トマト缶やコーン缶を数個、野菜ジュースを人数分に応じて数本、日持ち野菜を普段より少し多めに持つとよいでしょう。
野菜備蓄で最も強いのは、やはり育てることです。
ネギ、ニラ、青じそ、小松菜、ラディッシュ、ミニトマトなど、少しでも家庭で育てていれば、非常時の食卓に彩りが出ます。
野菜は「買って置く備蓄」と「土に植えておく備蓄」の二本立てで考える。
これが一番現実的です。
カセットコンロと燃料の目安
食料と水を備えても、調理する手段がなければ困ります。
特にオール電化の家庭では、停電するとIH調理器や電子レンジ、炊飯器が使えなくなります。その時に役立つのがカセットコンロです。
カセットコンロは、備蓄の中でも非常に重要な道具です。
米を炊く。
湯を沸かす。
味噌汁を作る。
レトルト食品を温める。
乾麺を茹でる。
鍋料理を作る。
これらができるだけで、非常時の食生活は大きく変わります。
問題は、ガスボンベを何本備えるかです。
使用時間は火力や調理内容によって変わりますが、一般的なカセットボンベ1本で強火なら約1時間程度使えることが多いです。実際には弱火や中火も使うので、調理方法によって持ち時間は変わります。
目安として、最低でも1人あたり3本、家族全体では1週間分として6本から12本程度は持っておきたいところです。
1人暮らしなら、最低3本、できれば6本。
2人暮らしなら、6本前後。
3人家族なら、9本前後。
4人家族なら、12本前後。
5人以上なら、12本以上を目安にします。
ただし、毎食しっかり調理する場合はもっと必要です。逆に、缶詰やそのまま食べられる食品が多ければ、燃料の消費は抑えられます。
燃料を節約する調理法も大切です。
米は浸水してから炊く。
パスタは水に浸してから短時間加熱する。
余熱調理を使う。
保温調理をする。
一度に多めに作る。
汁物を活用する。
こうした工夫で、ガスの消費を減らせます。
また、カセットコンロは屋外専用ではなく、室内で使いやすいのが利点ですが、換気には十分注意が必要です。ボンベの保管も、高温になる場所を避け、期限を確認しながら管理します。
備蓄において火は重要です。
温かい食事は、体だけでなく心も支えます。
水、米、味噌、缶詰があっても、火があれば食卓の力は何倍にもなります。
家族構成によって必要なものは変わる
備蓄量を考える時、単純に人数だけで計算してはいけません。
同じ4人家族でも、乳幼児がいる家庭、高齢者がいる家庭、食べ盛りの子どもがいる家庭、持病やアレルギーのある人がいる家庭では、必要なものが大きく変わります。
乳幼児がいる家庭では、粉ミルク、液体ミルク、離乳食、哺乳瓶、紙おむつ、おしりふき、子どもが食べ慣れた食品が必要です。非常時に大人用の備蓄だけでは対応できません。
高齢者がいる家庭では、やわらかい食品、お粥、レトルト介護食、とろみ剤、常用薬、栄養補助食品などが必要になる場合があります。餅や硬い乾パンなどは、喉に詰まる危険があるため注意が必要です。
アレルギーがある人がいる家庭では、一般的な非常食が食べられないことがあります。小麦、卵、乳、そば、落花生、えび、かになど、アレルギー対応食品を普段から確認しておく必要があります。
持病がある人は、食事制限に合った備蓄が必要です。塩分制限、糖質制限、腎臓病食、糖尿病食など、家庭ごとに条件が変わります。
また、食べ盛りの中高生がいる家庭では、想像以上に食料が減ります。大人の計算より多めに考えた方がよいです。
ペットがいる家庭では、ペットフード、水、トイレ用品も忘れてはいけません。災害時に人間の食料は用意していたのに、ペットの分がないということも起こり得ます。
備蓄は、一般的なリストをそのまま真似するだけでは不十分です。
自分の家族は何を食べるのか。
誰に特別な配慮が必要か。
何がないと困るのか。
普段から何をよく使っているのか。
これを家族ごとに考えることが大切です。
人数は計算の基本です。
しかし、家族構成こそが本当の備蓄計画を決めます。
1週間分・家族人数別モデル備蓄
ここで、家族人数別に1週間分のモデル備蓄を考えてみます。
まず1人暮らしです。
水は21リットル。米は2kgから3kg。乾麺やパスタを3食から5食分。缶詰やレトルト食品を7個から14個。味噌、塩、醤油、油を少量。乾物を数袋。日持ち野菜を少し。カセットボンベは3本から6本。これだけあれば、かなり安心です。
次に2人暮らしです。
水は42リットル。米は5kg前後。乾麺やパスタを6食から10食分。缶詰やレトルト食品を14個から28個。味噌1kgから2kg。乾物を数袋。じゃがいも、玉ねぎ、にんじんなどの日持ち野菜を一袋ずつ。カセットボンベは6本程度。
3人家族なら、水は63リットル。米は5kgから10kg。乾麺やパスタを10食分前後。缶詰やレトルト食品を21個から42個。味噌2kg前後。乾物をやや多めに。日持ち野菜を普段より多めに。カセットボンベは9本程度。
4人家族なら、水は84リットル。米は10kg前後。乾麺やパスタを12食から16食分。缶詰やレトルト食品を28個から56個。味噌2kg前後。乾物を各2袋ほど。じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、さつまいも、かぼちゃなどを常備。カセットボンベは12本程度。
5人家族なら、水は105リットル。米は10kg以上。食べ盛りの子どもがいれば15kg程度あってもよいでしょう。乾麺やパスタを20食分前後。缶詰やレトルト食品を35個から70個。味噌2kgから3kg。乾物を多めに。日持ち野菜も多めに。カセットボンベは12本以上。
ここで示した量は、あくまで目安です。実際には、各家庭の食事量や好みに合わせて調整する必要があります。
大切なのは、数字に縛られることではありません。
自分の家庭が一週間、買い物に行けなくても食べていけるか。
水と火と食料がそろっているか。
家族全員が食べられるものか。
この視点で確認することです。
1か月分の備蓄は「食料庫」を作る感覚で考える
1週間分の備蓄が整ったら、次の目標は2週間分、そして1か月分です。
ただし、1か月分になると、単なる非常食ではなく、家庭内に小さな食料庫を作る感覚が必要になります。
1か月分の目安は、かなりの量です。
1人なら、水90リットル、米9kg程度。
2人なら、水180リットル、米18kg程度。
3人なら、水270リットル、米27kg程度。
4人なら、水360リットル、米36kg程度。
5人なら、水450リットル、米45kg程度。
水だけでも非常に大きな量になります。すべてをペットボトルで置くのは現実的に難しい家庭も多いでしょう。だから、1か月分を考える場合は、飲料水、生活用水、浄水手段、雨水利用、給水袋などを組み合わせます。
食料についても、米、乾麺、缶詰、乾物、調味料、日持ち野菜、レトルト食品をバランスよく持つ必要があります。
1か月分を備えるなら、次の考え方が大切です。
まず、主食を厚くする。
米を中心に、乾麺、パスタ、餅、小麦粉を持つ。
次に、たんぱく質を確保する。
魚缶、豆缶、高野豆腐、乾燥豆、ナッツを持つ。
次に、味噌汁を作れる体制を整える。
味噌、乾燥わかめ、高野豆腐、切り干し大根、干ししいたけを持つ。
次に、野菜不足対策をする。
日持ち野菜、乾燥野菜、トマト缶、野菜ジュース、家庭菜園を組み合わせる。
最後に、心の備蓄を持つ。
お茶、コーヒー、甘いもの、子どもの好きな食品を置く。
1か月分の備蓄は、保管場所と管理が重要です。どこに何があるか分からなくなると、期限切れや重複買いが起こります。
そこで、棚ごとに分類するとよいです。
主食の棚。
缶詰の棚。
乾物の棚。
調味料の棚。
水の置き場。
燃料の置き場。
非常時用の道具箱。
このように整理すると、備蓄は管理しやすくなります。
1か月分の備蓄は、決して一度にそろえる必要はありません。
毎月少しずつ増やしていけばよいのです。
今月は水。
来月は米。
次は缶詰。
次は乾物。
次はカセットボンベ。
このように積み上げていけば、半年後、一年後にはかなり強い備蓄になります。
備蓄量を決める簡単な計算式
最後に、家庭で備蓄量を計算するための簡単な考え方をまとめます。
まず水です。
水は、人数 × 日数 × 3リットルです。
4人家族で7日分なら、4 × 7 × 3リットルで84リットルです。
次に米です。
米は、人数 × 日数 × 300gを目安にします。
4人家族で7日分なら、4 × 7 × 300gで8,400g、つまり8.4kgです。10kgの米袋が一つあれば、おおむね1週間分になります。
次に缶詰・レトルト食品です。
缶詰やレトルトは、人数 × 日数 × 1個から2個を目安にします。
4人家族で7日分なら、28個から56個です。ただし、これはすべてを一人一個で食べる場合の目安です。大きめの缶詰や家族で分ける食品があれば、少なくても足ります。
次にカセットボンベです。
最低限なら、人数に関係なく3本から6本。
1週間分を考えるなら、家族人数に応じて6本から12本以上。
調理を多くする家庭なら、さらに余裕を持ちます。
次に調味料と乾物です。
味噌、塩、醤油、油、乾燥わかめ、高野豆腐、切り干し大根、干ししいたけ。これらは一週間分というより、常に切らさないようにする備蓄と考えます。
計算式は便利ですが、最終的には「実際に一週間生活できるか」を確認することが大切です。
一度、家にある備蓄だけで一日過ごしてみるとよいです。
朝は備蓄の米と味噌汁。
昼は乾麺。
夜は缶詰とご飯。
水はどれくらい使ったか。
ガスボンベはどれくらい減ったか。
家族は満足できたか。
足りないものは何だったか。
実際に試すと、机上の計算では分からないことが見えてきます。
備蓄は、数字だけでは完成しません。
使ってみて、食べてみて、調整して完成していくものです。
備蓄は「量」よりも「続けられる仕組み」が大事
家族人数別の目安を見て、「こんなに必要なのか」と驚いた人もいるかもしれません。
特に水は量が多く、4人家族で1週間分なら84リットルになります。1か月分ならさらに膨大です。米や缶詰も、人数が増えるほどかなりの量になります。
しかし、ここで気をつけたいのは、完璧を目指して疲れてしまうことです。
備蓄は、完璧でなくても意味があります。
1日分しかなくても、ゼロよりは強い。
3日分あれば、初期の混乱を乗り越えられる。
1週間分あれば、かなり安心できる。
2週間分あれば、相当強い。
1か月分あれば、暮らしの安全度は大きく上がる。
大切なのは、今の自分の家庭がどこにいるかを知り、少しずつ増やすことです。
そして、備蓄は「続けられる仕組み」にする必要があります。
普段食べるものを多めに買う。
古いものから使う。
使った分だけ買い足す。
月に一度、賞味期限を確認する。
家族が食べないものは買わない。
置き場所を決める。
一覧表を作る。
この仕組みがあれば、備蓄は日常になります。
備蓄とは、災害の日だけの準備ではありません。
毎日の暮らしを少し強くする習慣です。
家族人数別の目安は、あくまで地図です。
その地図を見ながら、自分の家に合った備蓄を作っていくことが大切です。
食糧危機や災害は、いつ起こるか分かりません。
しかし、備えることは今日からできます。
水を一本増やす。
米を一袋多く持つ。
缶詰を数個足す。
乾物を買う。
カセットボンベを確認する。
家族で備蓄の場所を共有する。
この小さな行動の積み重ねが、非常時の大きな安心になります。
家族を守る備蓄は、特別なことではありません。
毎日の食卓を、少し厚く、少し強くすることです。
そしてその備えは、未来の家族への静かな贈り物になります。


